過敏性腸症候群かもしれないチェック項目や症状、治し方について解説
不快な胃腸の症状に悩まされていませんか。
- 下痢や便秘が交互にやってくる
- 頻繁にお腹が痛くなる
- 常にガスが多くてお腹が張る…
これらはすべて、過敏性腸症候群(IBS)による症状かもしれません。
多くの人が経験するこれらの症状は、日常生活に大きな影響を与え、心身の健康を損なうことがあります。
この記事では、過敏性腸症候群の症状やセルフチェック項目、そしてそれを和らげるための治し方について解説します。
過敏性腸症候群は、適切な知識と対処法を身につけることで、その症状を大幅に軽減し、より快適な日常生活を送ることができます。
- 1. 過敏性腸症候群とは
- 2. 過敏性腸症候群の症状
- 2.1. 下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)
- 2.2. 便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)
- 2.3. 混合型過敏性腸症候群(IBS-M)
- 3. 過敏性腸症候群かもしれないチェック項目
- 4. 過敏性腸症候群に効く食べ物
- 4.1. 高食物繊維食品
- 4.2. 水分を多く含む食品
- 4.3. 低FODMAP食品
- 5. 過敏性腸症候群の治し方
- 5.1. 食生活の改善
- 5.2. 薬物療法
- 5.3. プロバイオティクスの利用
- 5.4. ストレス管理
- 5.5. 運動習慣の確立
- 5.6. 認知行動療法
- 5.7. 十分な睡眠
- 5.8. 代替療法
- 6. 過敏性腸症候群にビオフェルミンは効く?
- 7. 過敏性腸症候群の症状は横浜内科・在宅クリニックへ
- 8. まとめ
過敏性腸症候群とは
過敏性腸症候群(IBS)は、消化器系の慢性的な機能障害の一つであり、腸に関連する多様な症状が特徴です。
日本では、この疾患は「難病指定」されておらず、明確な器質的異常が見られないため、診断が難しい病気の一つとされています。
世界的に見ても、過敏性腸症候群(IBS)は多くの人々が抱える一般的な健康問題であり、生活の質に大きな影響を与えることがあります。
過敏性腸症候群(IBS)の特徴的な点は、症状が長期間にわたって持続または繰り返し現れることです。
過敏性腸症候群(IBS)の原因は完全には解明されていませんが、以下などの要因が複合的に作用して引き起こすと考えられています。
- 腸の運動性の異常
- 腸内細菌のバランスの乱れ
- ストレスや心理的要因
- 食事の影響
- 遺伝的素因
過敏性腸症候群(IBS)の診断は、主に症状の評価と他の疾患の除外に基づいて行われます。
しかし、過敏性腸症候群(IBS)には特有の検査や治療法が存在するわけではなく、治療は主に症状の管理に焦点を当てたものになります。
この病気に対する理解と適切な対処が、過敏性腸症候群(IBS)患者の生活の質を向上させる重要な鍵です。
次のセクションでは、過敏性腸症候群(IBS)の具体的な症状に焦点を当て、より詳細に見ていきましょう。
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過敏性腸症候群の症状
過敏性腸症候群(IBS)は、症状によって大きく下痢型、便秘型、そして混合型に分類されます。
本章では、それぞれの病型ごとに特徴的な症状について解説します。
下痢型過敏性腸症候群(IBS-D)
最も顕著な症状は、頻繁な下痢です。
これには、水っぽく緩い便が突然、予測不能に排出されることが含まれます。
便の回数が通常よりも多く、時には1日に何度もトイレに行く必要があり、外出に不安を覚えるなど日常生活において大きなストレス源となります。
腸の運動が異常に活発であるため便の性質も変わり、水っぽい、または泥状の便となることが一般的です。
また、軟便と共に腹痛や腹部の不快感を経験することが多くあります。
便を排出することで一時的に緩和されることがありますが、痛みや不快感は繰り返し現れることが一般的です。
また、食事の直後に便意と共に腹部のけいれんや張りを感じることもあります。
特に、脂っこい食事、高繊維食品、または特定の食品添加物に敏感な人に顕著です。
また、緊張や不安が高まると、腸の動きが活発になり、症状が悪化することがあるため、ストレス管理は下痢型IBSの治療において重要な要素となります。
便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)
過敏性腸症候群の一つのサブタイプで、主に便秘を主症状としています。
このタイプのIBSでは、排便困難や不完全な排便感、硬くて乾燥した便が特徴的です。
便秘型IBSの患者は、日常的な排便パターンにおいてしばしば排便困難を経験します。
便秘型IBSの最も一般的な症状は、排便の頻度の減少です。
通常、健康な成人は1日1回から数日に1回の排便が一般的ですが、便秘型IBSの患者では、排便が週に数回以下になることがあります。
また、便が硬くて乾燥しているため、排便時に過度のいきみが必要になり、これがさらに不快感を引き起こし、便秘によって腸内に便が滞留すると、腹部の不快感や膨満感が生じ、これが腹痛を引き起こすことがあります。
便秘型IBSは、女性に多い傾向があり患者の生活の質に大きな影響を与える可能性があるため、適切な対処と管理が快適な生活を送るために必要です。
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混合型過敏性腸症候群(IBS-M)
下痢と便秘の両方の症状が交互に現れるIBSのサブタイプです。
混合型IBSの患者は、予測不能に水っぽい便や緩い便や、硬くて乾燥した便、排便困難を経験します。
また、下痢型や便秘型と同じく、腹痛や腹部の不快感が下痢・便秘いずれのフェーズにおいても現れることがあり、生活の質に大きな影響を与えます。
症状の管理と対処は個々の患者に合わせて行われるべきで、症状のパターンや強度に応じて治療法を調整することが重要です。
過敏性腸症候群かもしれないチェック項目
過敏性腸症候群(IBS)の診断は、特定の症状と他の消化器系の疾患の除外に基づいて行われます。
過敏性腸症候群(IBS)かもしれないと思った場合、以下のチェック項目を参考にしてください。
ただし、これらの項目はあくまでIBSの可能性を考慮する際の参考となるものであり、最終的な診断は医師によって行われます。
- 慢性的な腹痛や不快感
慢性的に週に数日の腹痛や腹部の不快感が続いていますか? - 便秘や下痢の症状
過去1ヶ月以上、便秘や下痢の症状が頻繁に見られますか?
これには水っぽい便、硬い便、ひも状の便、粘液を伴う便などが含まれます。 - 排便習慣の変化
排便の頻度や便の形状に変化が見られますか?
例えば、便秘と下痢が交互に起こる、排便の回数が増えたり減ったりするなど。 - 排便と腹痛の関連
腹痛や腹部の不快感は排便時に改善、もしくは悪化しますか?
また、排便の頻度や便の形状によって痛みが変わりますか? - 腹部膨満感やガス
過度の腹部膨満感やガスがありますか?
これには、お腹が張る感覚や、ガスによる不快感が含まれます。 - 不完全排便感
便をした後にも腸の中に便が残っているような不快感が残りますか? - 食事と症状の関連
特定の食品を摂取した後に症状が悪化しますか?
また、食事をすると症状が改善したり悪化したりしますか? - ストレスと症状の関連
ストレスや心理的な要因が症状に影響を与えていますか?
ストレスが高まると症状が悪化することがありますか?
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過敏性腸症候群に効く食べ物
過敏性腸症候群(IBS)の症状を和らげるためには、食生活の改善が非常に重要です。
下痢型では香辛料や脂っぽい食べ物などは過敏性腸症候群(IBS)の症状を悪化させる可能性がありますが、逆に症状を緩和する効果が期待できる食品もあります。
以下に、過敏性腸症候群(IBS)に効果的とされる食品について紹介します。
高食物繊維食品
食物繊維は便秘型IBSに特に有効です。
全粒粉製品、オートミール、ブラン、野菜、果物などの高繊維食品は、腸の動きを促進し、便秘を緩和するのに役立ちます。
ただし、過剰な繊維摂取はガスや膨満感を引き起こすことがあるため、摂取量は徐々に増やすことが推奨されます。
水分を多く含む食品
十分な水分摂取は、特に便秘型IBSにおいては重要です。
水分を多く含む食品、例えばキュウリ、セロリ、トマト、スイカなどは、水分摂取量を増やすのに役立ちます。
一方で下痢型の場合には適さないこともあり、食事内容については個々の症状に合わせて医師と相談することが望ましいです。
低FODMAP食品
FODMAPと呼ばれる特定の炭水化物のグループは、過敏性腸症候群(IBS)の症状を悪化させることが知られています。
代表的な食品としては以下などが含まれ、摂りすぎると症状の悪化につながりやすく、摂取量には注意が必要です。
- 小麦
- 玉ねぎ
- ひよこ豆
- リンゴ
- トウモロコシ
- 牛乳
- ヨーグルト
一方で、低FODMAP食品は、過敏性腸症候群(IBS)の症状緩和に有効とされており、これには以下などが含まれます。
- 米
- 肉
- 魚
- 人参
- ジャガイモ
- オレンジ
- ブドウ
- レモン
食生活の変更は、IBSの症状を改善する上で重要な役割を果たしますが、個々の体質や症状によって適した食品は異なるため、食事の変更には慎重なアプローチが必要です。
また、食生活の改善に加え、定期的な運動やストレス管理、十分な睡眠もIBSの症状緩和に役立つことが知られています。
自己判断での食事療法ではなく、栄養士や医師の指導の下でバランスの取れた食生活を心がけることが推奨されます。
過敏性腸症候群の治し方
過敏性腸症候群(IBS)は、完全に「治す」ことは難しい病気です。
しかし、症状を管理し、生活の質を向上させるための方法はいくつかあります。
過敏性腸症候群(IBS)の治療は、症状の種類と重さに基づいて、個々に合わせて行うことが重要です。
以下に、一般的な治療方法と対策を紹介します。
食生活の改善
IBSの症状を和らげるためには、食生活の見直しが非常に重要です。
特に便秘型では高繊維食品の摂取を増やしたり、低FODMAP食品への切り替え、過度なカフェインやアルコールの摂取を避ける、脂っこい食品を控えるなどが効果的です。
薬物療法
症状の重さに応じて、医師は腸の働きを調整する薬や整腸剤、便秘薬や下痢止めなどを処方することがあります。
過敏性腸症候群に保険適応のある内服薬もあるので、個々の症状やその程度によって処方されることがあります。
また、不眠やストレスが主な原因となる場合にはそれらに対しても薬物療法が有効なこともあります。
プロバイオティクスの利用
プロバイオティクスを含む食品やサプリメントは、腸内フローラのバランスを改善し、過敏性腸症候群(IBS)の症状を和らげる可能性があります。
ヨーグルトや発酵食品が含まれますが、症状によっては悪化する可能性もあるため、摂取に際しては医師とも十分に相談するようにしてください。
ストレス管理
ストレスは過敏性腸症候群(IBS)の症状を悪化させる主要な要因の一つです。
リラクゼーション、ヨガ、深呼吸などの個々に合ったストレス軽減方法が役立つことがあります。
運動習慣の確立
定期的な運動は、ストレスを減らし、腸の動きを改善するのに役立ちます。
習慣的に適度な運動を行うことで、便秘の緩和や全体的な健康向上にもつながります。
認知行動療法
認知行動療法(CBT)は、特にストレスや不安と強く関連する過敏性腸症候群(IBS)の症状を管理するのに役立ちます。
認知行動療法(CBT)は、症状に対する思考パターンと行動を変えることを目的としています。
十分な睡眠
良質な睡眠は、全体的な健康状態を改善し、IBSの症状を和らげるのに役立ちます。
規則正しい睡眠スケジュールを保つことが重要です。
代替療法
漢方薬やアロマセラピー、鍼治療、マッサージなどの代替療法が、症状を緩和するのに役立つことがあります。
過敏性腸症候群(IBS)の治療は、症状の種類と重さによって異なります。
そのため、自己判断せずに専門の医療機関で適切な診断と治療計画を立てることが重要です。
また、上記の方法は一例であり、個々の状況や体質に合わせて治療法を調整する必要があります。
過敏性腸症候群にビオフェルミンは効く?

過敏性腸症候群(IBS)の治療において、プロバイオティクスの使用が注目されています。
プロバイオティクスは、善玉菌として知られる生きた微生物で、健康な腸内細菌のバランスを改善するため、過敏性腸症候群(IBS)に伴うさまざまな症状の緩和に役立つとされています。
ビオフェルミンは、プロバイオティクスを含む薬剤の一つで、特に腸内のガスや膨満感を減らすのに有効です。
また、便秘や下痢を改善する効果も報告されており、腸の運動性の調節を助けることで、これらの症状を和らげる可能性があります。
ビオフェルミンを含むプロバイオティクスは、腸内フローラのバランスを正常化し、免疫機能の調節や腸の壁の保護にも寄与すると考えられています。
ただし、ビオフェルミンを含むプロバイオティクスの効果は、個人によって異なる可能性があります。
ビオフェルミンや他のプロバイオティクスを使用する際は、出来る限り医師の指導のもとで行うべきです。
また、プロバイオティクスの使用は、食生活の改善、ストレス管理、適切な運動など、総合的なIBS管理計画の一部として使用しましょう。
過敏性腸症候群の症状は横浜内科・在宅クリニックへ
過敏性腸症候群(IBS)は、生活の質に大きな影響を与える可能性があるため、症状が現れた場合は適切な医療機関、特に消化器系の診察が可能なクリニックを受診することが重要です。
症状が軽い場合でも、専門家による正確な診断と治療計画の策定が大切です。
過敏性腸症候群(IBS)の症状は他の消化器系の疾患、例えば炎症性腸疾患や大腸がんなどと似ていることが多いため、正確な診断を受けることが不可欠です。
また、過敏性腸症候群(IBS)は個人によって症状が異なるため、個々の状況に合わせた治療計画の策定も重要です。
横浜内科・在宅クリニックでは、丁寧な診察・検査を行い、必要に応じて内視鏡検査が行える病院への紹介も行っております。
まずはお気軽にご相談ください。
まとめ
過敏性腸症候群(IBS)は、多くの人々が経験する消化器系の慢性的な疾患であり、人によっては生活の質に大きな影響を与える可能性があります。
その症状は個々のケースによって異なり、下痢型や便秘型、混合型の3つに主に分類されます。
過敏性腸症候群(IBS)の診断には特異的な検査はなく、IBSを強く疑う症状の持続を確認したうえで類似の症状を認める他の疾患を除外していくことで確定することが可能で、診断に時間を要することもあります。
過敏性腸症候群(IBS)の治療には生活習慣の改善が重要であり、食生活では低FODMAP食など症状悪化につながりにくい食物を選ぶ必要があるほか、喫煙や飲酒の中止、ストレスの緩和や十分な睡眠、適度な運動などの環境調整も重要です。
過敏性腸症候群(IBS)は個人によって症状が様々であり、完治するというものではありません。
自己判断せずに適切な医療機関での診断と治療を受けること、そして総合的なライフスタイルの改善を心がけることです。
参考文献
過敏性腸症候群(IBS)|慶応義塾大学病院 医療・健康情報サイト
循環器内科:小正 晃裕 医師
横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師
『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』
【経歴】
・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長
【資格】
・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者