子供がインフルエンザになった時の親の対応|風邪や似ている病気との違いについても解説
寒い時期に流行する病気の代表といえばインフルエンザ。
もしお子さまがインフルエンザにかかったら…と、ご不安な方も多いかと思います。
- インフルエンザの症状って?
- どんな合併症があるの?
- 新型コロナウイルスやRSウイルス感染症との違いは?
- 子どもがインフルエンザにかかったらどうすればいい?
今回は、知っているようで意外と知らない、子どものインフルエンザについて詳しく解説していきます。
子供がインフルエンザになる原因は?
当たり前ですが、「インフルエンザ」の原因は、インフルエンザウイルスに感染することです。
インフルエンザウイルスには大きく分けて以下の3種類があります。
- A型
- B型
- C型
それぞれ詳しく見ていきましょう。
A型
ヒトと動物両方に感染し、たくさんの亜型(種類)があります。
ウイルスの膜にあるタンパク質が形を変えることで、一度感染しても再び感染してしまうといったことが起こります。
そのため流行する型に対応したインフルエンザワクチンを毎年接種する必要があるのです。
また、新型ウイルスの出現や世界的大流行(パンデミック)も、ウイルスの膜のタンパク質が変化することが原因で起こります。
B型
ヒトのみに感染します。
A型とは異なりウイルスがほとんど変異しないため、大流行は起こりにくいとされています。
C型
ヒトのみに感染します。
一度感染すると免疫がつき、ほぼ一生かからないと言われています。
そのため、ほとんどの大人は免疫を持っており、感染者のほとんどは子どもです。
この型については検査できる医療機関が少なく、実際に感染したとしても気付かないまま過ごしている可能性があります。
関連記事:インフルエンザの初期症状をチェック項目で解説!受診するタイミングは?
子供のインフルエンザの感染経路は?
インフルエンザの感染経路は主に「飛沫感染」と「接触感染」です。
感染経路 | 特徴 |
飛沫感染 | 感染者の咳やくしゃみなどの唾液や鼻水が小さな水滴となり飛び散り、水滴を吸い込むことで感染 |
接触感染 | 感染者が咳やくしゃみを押さえた手などでドアノブなどに触り、ウイルスが付着 ウイルスが付着した箇所に触れた手で自分の口などを触ることでウイルスが侵入し感染 ※ウイルスは2~8時間程度とどまる |
子供のインフルエンザの症状
インフルエンザの症状は、ふつうの風邪に比べて症状が強いのが特徴です。
ウイルスは喉や鼻の粘膜に付着するとたちまち増え始め、1〜5日(平均2日)の潜伏期間を経て突然症状が出現します。
一般的には、まず初めに以下などといった強い全身症状が出現します。
- 突然の発熱(38℃以上)
- 全身のだるさ
- 関節痛
- 筋肉痛
- 頭痛
- 食欲不振
- 目の充血
そこから少し遅れて、咳・のどの痛み・鼻水などの呼吸器症状が現れ、下痢・吐き気・嘔吐・腹痛などの消化器症状を伴うこともあります。
通常、発熱は3〜5日程度続き、7〜10日前後で治癒します。
まれに、意識障害(呼びかけても反応が悪い)やせん妄(幻覚)・異常行動(興奮する、走り回るなど)といった症状がみられることもあります。
関連記事:インフルエンザは潜伏期間でもうつるの?感染力や期間について解説!
子供のインフルエンザによって引き起こされる危険な合併症
インフルエンザは合併症を起こしやすく、特に免疫力が弱い乳幼児などは注意が必要です。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
熱性けいれん
原因 | 未熟で未発達な脳に、発熱が刺激として伝わってしまうことで発症 |
症状 | 発熱時に突然手足が突っ張って全身のけいれんを引き起こす 白目をむく、唇が紫色になる(チアノーゼ)こともある。 |
治療 | 抗けいれん薬を使用 通常、使用後十数秒~2分程度で治まり、後遺症を残しません。 ※10分以上続く・何度も繰り返す・けいれんが治まった後も意識が戻らない場合、脳炎や脳症の可能性があるため、直ちに医療機関を受診してください。 |
インフルエンザ脳炎・ 脳症
原因 | 脳炎 脳に直接ウイルスが侵入し炎症を引き起こす 脳症 脳内からウイルスが検出されないが、ウイルス感染により過剰な免疫反応を起こし、脳細胞が攻撃を受ける |
症状 | 急な発熱に続き、呼びかけても反応がない、ぐったりとしているといった意識障害 けいれんを伴うことがある ※命に関わる合併症で、回復しても障害が残る可能性があるため、上記症状がある場合、直ちに医療機関を受診してください。 |
治療 | 現時点で脳炎や脳症を根本的に治療する方法がない。 けいれんを抑えたり、脳のむくみを取る対処療法が中心 ※脳炎や脳症の予防としてワクチン接種が効果的 |
※子どものインフルエンザの場合、解熱剤の一部にはインフルエンザ脳炎・脳症の症状を悪化させたり、ライ症候群(インフルエンザなどに感染した後、特にアスピリンを服用している子どもに急性脳症や肝臓の脂肪浸潤を引き起こし、命に関わることもある原因不明でまれな疾患)発症のきっかけとなる可能性があるため、原則としてアセトアミノフェン(カロナールなど)以外は使用しないことになっています。
※解熱剤の成分が不明な場合は、医師や薬剤師に必ず確認してください。また、大人や上の兄弟の解熱剤を使うのもおやめください。
肺炎
原因 | ウイルスや細菌が肺に侵入して炎症を引き起こす インフルエンザウイルスそのものが原因となったり、インフルエンザ感染をきっかけに細菌感染を引き起こすこともある |
症状 | 高熱とともに激しい咳が出現 通常より呼吸が荒く、苦しがることもある |
治療 | ウイルス性には対処療法、細菌性では抗生物質を使用しての入院治療 呼吸状態が悪い場合、酸素吸入を並行して行う ※乳児は進行が早く、急変することもあるため咳が続いて苦しそうな時は医療機関を受診しましょう。 |
中耳炎
原因 | 鼻やのどに付着したウイルスや細菌が耳管を通って中耳に入り炎症を起こす |
症状 | 中耳に膿が溜まると鼓膜に圧力がかかり強い痛みが出現 小さな子どもは、機嫌が悪くなる、しきりに耳を気にするなどが見られる |
治療 | 細菌性は抗生剤を使用 炎症がひどい場合、鼓膜を切開して膿を出して処置 |
関連記事:子供が中耳炎になった時の症状別の対応方法
気管支炎
原因 | ウイルスそのものや細菌による二次感染によって気管支に炎症を起こす |
症状 | 発熱および激しい咳 炎症がひどい場合、気管支が腫れ呼吸が苦しくなったり、肺炎になる可能性もある インフルエンザの症状が出始めて数日後に症状が出ることが多い |
治療 | 痰を出しやすくする薬や、気管支を広げる薬を使用 細菌感染が原因の場合、抗生物質を使用 |
インフルエンザと似ている症状の病気との違いは?
インフルエンザと新型コロナウイルスとの違い
以下の表は、風邪・インフルエンザ・新型コロナウイルス感染症の一般的な症状の強さをまとめたものです。
※あくまでも目安であり、症状には個人差があります。
風邪 | インフルエンザ | 新型コロナウイルス | |
発熱 | ○(37〜38℃) | ◎(38℃以上) | ◎(38℃以上) |
のどの痛み | ◎ | ○ | ◎ |
咳 | ○ | ◎ | ◎ |
鼻水 | ◎ | ○ | △ |
たん | ○ | ○ | △ |
息切れ・呼吸苦 | × | × | ○ |
寒気 | △ | ○ | ○ |
関節痛・筋肉痛 | ○ | ◎ | ○ |
全身のだるさ | ○ | ◎ | ○ |
頭痛 | △ | ◎ | ○ |
腹痛・下痢 | × | ○ | △ |
味覚・嗅覚障害 | × | × | ○ |
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インフルエンザとRSウイルス感染症の違い
RSウイルス感染症とは、RSウイルスの感染による呼吸器感染症であり、乳幼児の肺炎の約50%、細気管支炎の50〜90%を占めると報告されています。
2~8日の潜伏期間の後に、発熱(場合によっては高熱)および咳・鼻水・喘鳴といった呼吸器症状が徐々に現れます。
生後1歳までに50~70%以上が、3歳までにほぼすべての小児が感染するといわれています。
初めて感染する乳幼児の約7割は数日のうちに軽快しますが、約3割は咳が悪化し、喘鳴(ヒューヒュー、ゼーゼーとした音)・呼吸困難などの症状を伴って気管支炎や肺炎に移行します。
乳児(特に生後2〜5ヵ月頃)では重症化して入院する確率が高いため、呼吸器症状が目立つ場合は熱がなくても早めに受診しましょう。
11月〜1月頃が流行時期ですが、最近では夏からの流行もみられます。
非常に感染力が強く何度もかかる病気で大人も感染しますが、大人の場合は軽い風邪の症状で済むことがほとんどです。
インフルエンザと同じく、飛沫感染・接触感染が原因となります。
RSウイルスに特効薬はなく、治療は対症療法が中心です。
関連記事:子供に流行中のRSウィルス感染症とは?症状や保育園の登園はどうすればいい?
子供がインフルエンザになったときに親はどうすればいい?
受診の目安
インフルエンザは発症後48時間以内であれば抗インフルエンザ薬(タミフル・リレンザ・イナビルなど)の投与でウイルスの増殖を抑える効果が期待できます。
なお、インフルエンザの検査については発症後24〜48時間が最も検出率が高いと言われています。
特に発症直後は検査をしても陽性にならない場合があるので、発症からおよそ6時間以上の経過を目安に受診しましょう。
インフルエンザになった時の食事
「食欲はなくて当たり前」くらいに考えて無理に食べさせず、子どもが食べられるものを食べられる時に与えましょう。
ゼリーやプリン、アイスクリーム、うどんやお粥など、食べやすいものなら何でもかまいません。
体力を落とさないためにも、無理のない範囲で食事を摂らせてください。
発熱が続くと脱水の危険があるため、こまめな水分摂取を心がけてください。
お茶やお水でももちろんかまいませんが、体に必要なミネラル分も含まれているスポーツドリンクや経口補水液などがおすすめです。
どうしても口から水分摂取ができない場合は点滴が必要になることもあります。
特に乳幼児の場合は脱水を起こしやすいので、半日以上何も口に出来ない、あるいは口にしても吐いたり下痢をしてしまう場合は医療機関を受診しましょう。
入浴について
入浴は体力が奪われるため、熱が下がって症状が軽くなってからにしましょう。
熱が上がるとたくさん汗をかきますので、体を拭いたり服を着替えたりして汗で体が冷えないようにしてください。
インフルエンザに効く解熱剤
高熱(38℃以上)が続くと体力が必要以上に奪われるため、医師から処方された解熱剤(アセトアミノフェン [カロナールなど] )を使用しましょう。
市販の解熱剤を使用される際には、必ず医師または薬剤師にご相談ください。
薬を使う以外の方法としてはクーリングがあります。
脇の下や足の付け根には太い動脈が通っていますので、その部分を氷や保冷剤で冷やすと解熱効果が期待できます。
ただし、むやみに熱を下げることはおすすめしません。
体温を上げることで熱に弱いウイルスを退治しているので、熱を下げると治るまでに時間がかかってしまいます。
関連記事:【医師監修】解熱剤が効かない?解熱剤の種類と使うタイミング、効果や副作用について
部屋の温度・環境
インフルエンザウイルスは低温・低湿度の条件で増えていきます。
このため、室温を20~25℃、湿度を50~60%程度に保つようにしましょう。
1~2時間に1回程度は換気することも大切です。
室内に洗濯物を干すだけでも湿度を上げることができます。
加湿器を使う時は、こまめに掃除をして清潔に保ちましょう。
その他を付けることは?
インフルエンザの症状で、異常行動やせん妄などが報告されています。
発熱している間は子どもを一人にしないで必ず大人が見守りをしてください。
意識障害や異常行動など、いつもと違う反応が見られた場合は必ず医療機関を受診をしましょう。
インフルエンザで子供が登園・登校ができるようになる目安
現在、学校保健安全法では「発症した後5日を経過し、かつ、解熱した後2日(乳幼児は3日)を経過するまで」をインフルエンザによる出席停止期間としています。
ただし、病状によって学校医やその他の医師が感染のおそれがないと認めた場合はこの限りではありません。
一般的に、インフルエンザ発症前日〜発症後3-7日間は、のどや鼻からウイルスを排出していると言われています。
そのためウイルスを排出している期間は外出を控える必要があります。
排出されるウイルス量は解熱とともに減少していきますが、解熱後もウイルスを排出している可能性があります。
排出期間には個人差がありますが、咳やくしゃみ等の症状が続いている場合は不織布マスクを着用するなど、周りの方へうつさない配慮が必要です。
関連記事:インフルエンザワクチンにかかる費用や値段はどれくらい?メーカーの種類によって効果は変わる?
横浜内科・在宅クリニックでの対応
横浜内科・在宅クリニックでは、発熱外来でインフルエンザの迅速検査が可能です。
発熱外来専用の待合室で検査から診察を受けていただけます。
インフルエンザかも?といった症状があれば発熱外来のご予約をお願いします。
まとめ
いかがでしたか?
今年は、新型コロナウイルスとの同時流行も懸念されています。
まずはインフルエンザにかからないように、手洗い・うがい・アルコール消毒・マスクの着用を心がけ、ワクチンも接種して流行に備えましょう!
参考文献
横浜内科・在宅クリニック 理事長:朝岡 龍博 医師
『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』
【経歴】
・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長
・2025年 医療法人 幸龍家 理事長
【資格】
・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者