ワキガになる原因とは|どんな匂い?治療法や治し方について解説
皆様は、自分が「ワキガ」かもしれないと感じたことはありますか?
実は、医師である私自身も脇の匂いに悩まされたことがあります。
それはある暑い夏の日のことでした、趣味であるジョギングをした後に家に帰ると、ふと自身の脇の匂いが気になりました。
家族からは何も指摘されなかったものの、それ以降、自分自身が強い臭いを感じたり、服に臭いが残ることが多くなったように感じます。
脇を洗っても臭いが続くことや、制汗剤やデオドラントを使用しても効果が一時的であり、
「自分はもしかしてワキガなのではないか」
と疑いを持つきっかけになりました。
皆様もこのエピソードのように、脇の臭いが気になってしまい、日頃から不安を感じてしまったことがあるのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、ワキガの原因や診断方法・対策について、一つずつ解説していきたいと思います。
ワキガの原因
ワキガとは医学的には「腋臭症」と呼ばれています。
最近の遺伝子研究により、腋臭症とABCC11遺伝子という遺伝子との関連が裏付けられ、「疾患」というよりは「体質」と捉えられています。
ABCC11遺伝子とは耳垢が湿っているか、乾いているかを決定つける遺伝子です。
日本人の約16%が湿型耳垢のABCC11遺伝子を持っており、その8割に腋臭があるとされています。
そのため日本人の約10%は腋臭症であると推測することができます。
しかし実際の受診率は自覚が敏感な若年女性に偏っており、自分の腋が臭く感じるからといって、腋臭症とは限らないのが現実です。
一般的に、人の汗腺(汗を分泌する穴のこと)には「エクリン腺」と「アポクリン腺」の2種類が存在します。
「エクリン腺」はほぼ全身にあって温熱刺激や緊張によって汗を分泌します。
一方で「アポクリン腺」は腋窩(脇の下)や外陰部(性器の近く)に分布し、思春期になると性ホルモンの影響を受け、汗を分泌します。
匂いを生じる汗は、ほとんどが「アポクリン腺」です。
湿型耳垢のABCC11遺伝子を有している方は、大きなアポクリン腺管を持っており、より強い腋臭となるのです。
ではワキガは遺伝以外の原因は存在しないのでしょうか。
アポクリン腺は交感神経の緊張で発汗が増加すると言われています。
つまりストレスを抱えることが腋臭の増加につながるのです。
また、普段の食生活において赤身肉や動物性脂肪を大量摂取している場合も腋臭が悪化することも指摘されています。
このように、遺伝のみならず生活習慣によってもワキガの匂いは悪化すると考えられます。
また、ホルモンも影響していると言われています。
一般的にワキガは思春期に発症し、20歳代にピークがあることが多いです。
また、女性の場合は月経前から月経時に増強します。
このように遺伝的な背景がある中で、食生活やホルモンバランスのような要素が重なりワキガの症状が現れます。
▶︎加齢臭がする原因と対策を解説|どんな匂い?何歳から匂う?
ワキガはどんな匂い?
「アポクリン腺」から分泌される物質からワキガの匂いは作られます。
酸っぱい匂いは「脂肪酸」という物質が関与しており、刺激的な尿のような臭いは「アンモニア」という物質が関与しています。
また、生臭い匂いは細菌が汗の中の成分を分解することで生じます。
このように酸っぱい匂いや生臭い、魚のような匂いがワキガの特徴ですが、匂いはこれ以外にも多岐に渡ります。
では、このような匂いを発しているにもかかわらず、なぜ自身では気づきにくい特徴があるのでしょうか。
本人が長い間ワキガの臭いにさらされている場合、臭いに対して麻痺してしまうことがあります。
これは「嗅覚適応」と呼ばれる現象であり、環境中の特定の匂いに対して感度が低下することを指します。
自分の身体の匂いに常に暴露していると、他の人に比べて感じにくくなり、ワキガの臭いに対して鈍感になってしまうのです。
知らない人の家に入ると独特の匂いを感じることがありますよね?
それと同じ原理で、本人は匂いに慣れてしまい気づくことができないのです。
▶︎汗が臭い原因と対策を男女別にわけて解説|匂いの特徴についても
ワキガはうつる可能性がある?
心配される方もいらっしゃるかもしれませんが、ワキガ自体は直接他人に感染する病気ではありません。
前述の通り、ワキガは遺伝的な要素と生活習慣が強く関与しており、個人の体質的な問題となっています。
ただし、一般的に人との接触によって細菌や他の微生物が皮膚表面に付着すると、体臭に影響を与えることがあります。
例えば、他人の汗や体臭が染み込んだ衣服や物品を共有すると、それが自分の皮膚表面に触れることで一時的に匂いが移る場合があります。
しかしこれは一時的な現象であり、ワキガ自体が人にうつることはありませんのでご安心ください。
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ワキガかもしれないチェック項目
ワキガの特徴としては、以下が報告されています。
✅耳垢が湿っていること
✅腋汗が多い(腋窩多汗症)の合併が多いこと
✅腋毛が多く、衣類が黄ばみやすいこと
また、上記のアポクリン腺は「耳孔」「乳輪」「陰部」にも分布するため、その部位からも臭いがある場合はワキガの可能性が考えられます。
ワキガの臭いは腋毛の生え始める時期の前後に発症し、成長とともに強くなり20歳前後でピークとなることが一般的です。
また ワキガは優性遺伝(血のつながる両親のどちらかがその遺伝子を持っていると、子に必ず伝わる性質の遺伝)にて継承されるため、両親のどちらかがワキガということも特徴の一つです。
検査方法には以下などがあります。
✅ガーゼテスト法
✅アポクリン腺の分泌負荷試験
✅試験切開法
ガーゼテスト法は、腋に5 分程度ガーゼをはさみ、そのガーゼから腋臭が存在するかを確認する方法です。
ガーゼテスト法で確認が難しい場合は、アポクリン腺の分泌を促進する注射を使い、腋臭を誘発させることができる「アポクリン腺の分泌負荷試験」を行います。
「試験切開法」は実際に皮膚に切開を入れて、目視でアポクリン腺の量を確認する方法です。
以上の検査方法以外に、以下のグレード評価法という評価方法もあります。
Stage Ⅰ:まったく臭わない
Stage Ⅱ:腋窩に挟んだガーゼからかろうじてわかる
Stage Ⅲ:よくかげばわかる程度
Stage Ⅳ:横にいてわかる程度
Stage Ⅴ:電車などで人を間に挟んでいてもわかる
(日本形成外科学会 腋臭症診療ガイドラインより引用)
腋臭症の診断においては、定量あるいは定性的な検査法が確立されていないため、問診や腋臭の確認を行って自己妄想を否定し、治療の有無を判断する必要があります。
「横にいてわかる程度」
「電車などで人を間に挟んでいてもわかる程度」
といった基準は参考になるかもしれませんね。
ワキガの治療について
ワキガの汗の臭いは個人の体質や遺伝的要因などの先天的要因によりますが、食事、生活習慣などである程度の改善が可能です。
腋毛の処理も、臭いの軽減が期待できます。
治療の前に試してみましょう。
ワキガを直接的に抑えるような飲み薬は存在しませんが、塩化アルミニウム溶液・エクロックゲルなどの多汗症の塗り薬を使うことで、腋を乾燥させ皮膚常在菌を減らし、間接的に臭いを減少させることができます。
局所注射としてはボツリヌストキシン(ボットクス)が使用されます。
ボツリヌストキシン製剤はエクリン腺という汗腺に作用し汗の量を減らすことができます。
アポクリン腺には作用しないのでワキガの臭いを直接的に抑制はできませんが、発汗を抑えるため乾燥傾向となり、間接的に腋臭を減弱させることが期待できます。
外科的な治療法としては、アポクリン腺の減量が中心です。
保険適用となっている皮下剪除法と皮膚切除法が第一選択です。
しかし、患者様背景(術後の安静期間、臭いの程度など)を考慮し治療法を選択します。
横浜内科・在宅クリニックでの対応方法
腋の匂いに悩む人は多いです。
特に暑い季節や運動をした後など、汗が増える状況ではその臭いがより強く感じられることがあります。
もしワキガの臭いに対して悩みを抱えている場合は、遠慮せず受診をしてください。
丁寧な問診・視診を行い、症状に対し治療介入が必要か否かを判断いたします。
多汗が原因であれば飲み薬・塗り薬の処方が必要であり、その方にあった薬を処方させて頂きます。
何かお困りのことがございましたら、気軽に当院にご相談くださいね。
前述の治療法は、症状の重さ・多汗などの原因によって保険適応となります。
まずは受診をいただけると嬉しいです。
横浜内科・在宅クリニック院長 朝岡が実際に経験した例!
汗の匂いは笑い話にされることが昔は多かったですが、今では学生~大人まで男女問わず臭いに対して非常に敏感です。
なのでここ数年ワキガを主訴に病院に来られる方が増えました。
脇汗に対して塗り薬で対応しても、改善得られない方もいます。
そういった場合には形成外科を紹介し、手術を行うことで、ワキガに悩まなくなった方もいらっしゃいました。
まとめ
自分の匂いに対し悩みを抱えている方は多いと思われます。
特に脇の臭いは、腋臭症という名前がつけられているように、「病気」と考えてしまい不安に思うでしょう。
特に暑い季節や運動をした後など、汗が増える状況ではその臭いがより強く感じられることがあります。
大切なことは、腋の臭いに悩んでいるからといって自分自身を否定しないことです。
遺伝的な要素や生活習慣、食生活などによって影響を受けるため、自分自身を受け入れながら、適切な身体のケアを行い、自信を持って日々を過ごしてください。
それでももしワキガの臭いに対して悩みが続く場合は、医療機関に相談することをおすすめします。
適切な診断を受け、適切な治療法や対策を導入することで、より快適な生活を送ることができるようになります。
参考文献
横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師
『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』
【経歴】
・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長
【資格】
・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者