腹痛の原因は?疑うべき病気と和らげる方法
横浜内科・在宅クリニック院長の朝岡です。
この冬には当院の外来にインフルエンザやコロナウイルスの検査を希望される方が多くいる中で発熱以外に腹痛症状を伴うウイルス性胃腸炎の診断させていただく機会も増えて来ており、子ども・大人も共に注意が必要になっています。
腹痛という症状1つを切り取っても様々な病気が隠れています。
今回は『腹痛の原因は?疑うべき病気と和らげる方法』をご紹介していきます!
- 1. 腹痛の原因となる病気・疾患
- 1.1. ①急性胃腸炎
- 1.2. ②急性虫垂炎(盲腸)
- 1.3. ③胃潰瘍
- 2. 腹痛の種類
- 2.1. 内臓痛(波のある鈍痛で特定のお腹の部位がわからない)
- 2.2. 体性痛(針でつつかれるような痛みで、お腹の部位がわかる)
- 2.3. 関連痛(体の表面の部分に痛みを感じる)
- 3. 腹痛を和らげる方法を紹介
- 3.1. 痛みを和らげる姿勢
- 3.2. 患部を温める
- 3.3. 薬を服用する
- 3.4. ①原因不明の腹痛
- 3.5. ②重篤な症状の場合
- 3.6. 薬物アレルギーや過敏症の既往がある場合
- 3.7. ④妊娠中または授乳中の場合
- 3.8. ⑤他の薬物との相互作用がある場合
- 4. 腹痛の自己診断は危険!
- 5. 急な腹痛の検査・治療なら横浜内科・在宅クリニックへ
- 6. まとめ
腹痛の原因となる病気・疾患
まず腹痛症状についてです。
腹痛は症状が生じるお腹の場所によって疑う病気が変わってきます。
軽症の急性胃腸炎の患者さんがいるかと思えば、一方で、腸に流れている動脈という血管が詰まってしまう腸間膜動脈閉塞症という生死に関わる重篤な疾患の場合もあります。
図1を参考にしてください。
腹痛と言っても、病気の種類によって、それぞれ痛みの部位が若干異なります。
お腹の部位は、心窩部(みぞおち)、右上腹部(右季肋部)、左上腹部(左季肋部)、臍周囲、右下腹部、左下腹部、臍下部(下腹部正中)などに区分されます。
それぞれの部位別に腹痛の原因となる代表的な病気があります。
一般的に腹痛を訴える人で多い3つの病気、急性胃腸炎・急性虫垂炎(盲腸)・胃潰瘍を簡単に解説いたします。
①急性胃腸炎
急性胃腸炎とはウィルスや細菌感染によって胃腸の粘膜に炎症が起きる病気です。症状は主に腹痛/下痢/嘔吐が出てきます。
嘔吐と下痢により体内が脱水状態になる可能性があり、こまめな水分摂取を気にする必要があります。
また血便が出現することもあり、緊急で入院が必要になる可能性があります。
②急性虫垂炎(盲腸)
急性虫垂炎とは虫垂の内部に細菌が感染して炎症がおきる病気です。
虫垂とあまり聞きなじみがないかと思いますが、虫垂はお腹の右下あたりにある大腸の初めにある部分から細い管状の突起した部分が虫垂という部位になります。
症状は初期時はみぞおちや臍の周りの痛みや悪心、嘔吐、食欲の低下等の症状が多く見られます。
それから数時間後に病状が進行して炎症が強くなると虫垂のある右下腹部の強い痛みとなる場合が多く、このように病状の進行によって痛みの場所が移動するのが虫垂炎の特徴です。(ただしこのような典型的な痛みの経過をとらない場合もあります)
手術が必要になる場合がほとんどであり、未治療のままだと、虫垂に穴が空いてしまい、腸穿孔といった状態になり、生死に関わる状態になることがあります。
③胃潰瘍
胃潰瘍とは胃の粘膜がただれ、胃の壁が傷ついている状態の病気です。
症状は自覚症状の約90%が腹痛で心窩部(みぞおち)に痛みを強く感じます。
他にも吐き気や嘔吐、吐血症状があげられます。胃カメラで胃に傷がついていたなんて聞いたことがあると思いますが、それが胃潰瘍です。
関連記事:下痢を出し切る方法はある?原因や種類、対処法について解説
腹痛の種類
先程のように腹痛の原因は様々で、しばらくすれば自然に治る軽症なお腹の痛みから命に関わる重症なお腹の痛みまであります。
腹痛の種類にも主に3つありますのでこちらを解説していきます。
内臓痛(波のある鈍痛で特定のお腹の部位がわからない)
臓器が引っ張られるような力が加わって痛みが起こるキリキリとする痛み。
体性痛(針でつつかれるような痛みで、お腹の部位がわかる)
臓器を覆っている粘膜が刺激を受けてズキズキする痛みが起こる。救急対応が必要なことがある。
関連痛(体の表面の部分に痛みを感じる)
原因がある部位と神経で繋がっている部分に痛みが起こる。
関連記事:過敏性腸症候群かもしれないチェック項目や症状、治し方について解説
腹痛を和らげる方法を紹介
痛みを和らげる姿勢
図のように背中を丸めたり、ひざを胸に引き寄せたりするなど、腹部に少ない圧力をかける姿勢をとることが助けになります。
このような姿勢は、胃や腸の筋肉に対する圧力を軽減し、痛みを和らげるのに役立ちます。
患部を温める
腹痛を和らげるために、お腹を温めることが役立つことがあります。
暖房パッドや温水ボトルを使用して、腹部を軽く温めることで筋肉が緩み、血行が促進されるため、痛みが和らぐことがあります。
(温度が高すぎる場合には注意が必要です。)
また、ご注意いただきたいのが、虫垂炎や胆のう炎などの炎症性疾患が原因の腹痛には逆効果といわれています。
個人で腹痛の原因を見極めることはできないので、お腹を温めて良いかは自己判断せず、必ず医師の判断を仰ぐようにしてください。
薬を服用する
薬物療法も腹痛の症状を和らげるために役立つことがあります。
一般的な胃薬として非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)や鎮痛剤、抗酸化薬などが考えられます。
ただし、薬を服用する際には医師や薬剤師の指導に従うことが重要です。また、特定の症状や病状に応じた薬が必要な場合もありますので、医師の診断を受けることが大切です。
腹痛が持続的で重度の場合、または他の症状と組み合わさっている場合は、医師の診察を受けることをお勧めします。
医師は原因を特定し、適切な治療法を提供することができます。
腹痛時は薬の服用も気をつけておかないと症状が悪化する場合があります。
今回は5つにまとめて解説いたします。
①原因不明の腹痛
腹痛の原因が分からない場合、薬物の服用は慎重に行う必要があります。
腹痛はさまざまな原因によって引き起こされる可能性があり、特定の原因に対処しないまま薬を服用することは問題を悪化させることがあります。
まず、原因を特定するために医師の診察を受けるべきです。
②重篤な症状の場合
高熱、嘔吐、血便、腹部腫れ、意識の混濁などの重篤な症状がある場合、薬を服用する前に医師の診察を受けるべきです。
これらの症状は、重大な医療問題を示す可能性があるため、適切な治療が必要です。
薬物アレルギーや過敏症の既往がある場合
特定の薬物に対するアレルギーや過敏症の既往がある場合、その薬物を避けるべきです。
薬物アレルギーは重篤な副作用を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。
④妊娠中または授乳中の場合
妊娠中や授乳中には、薬物の使用が胎児や授乳中の赤ちゃんに影響を及ぼす可能性があるため、医師に相談する必要があります。
安全な薬物の選択と適切な投与量を医師から指示を受けるべきです。
⑤他の薬物との相互作用がある場合
他の薬物を服用している場合、薬物相互作用によって健康への悪影響が発生する可能性があるため、医師または薬剤師に相談してください。
関連記事:腹痛と頭痛が同時に起こる病気は?自律神経失調症の恐れあり
腹痛の自己診断は危険!
腹痛症状には様々な病気がかくれていることが多いです。
中でも実際に見た患者様のエピソードを2つ紹介いたします。
case1.
30代の女性の患者様で夜中に急激な腹痛症状が一度来たが、自己判断で1週間ほど様子見をされていました。
波がある腹痛だったので病院にも相談せず過ごしていたがどんどん痛みが強くなってきた所で僕のクリニックに来られました。
そこで超音波検査をしたところ、下腹部に違和感を持ち、妊娠反応検査にて妊娠陽性を認めたので、産婦人科を紹介したところ子宮外に妊娠をしていることが判明し、すぐに手術を行うことになりました。
早期発見ができていれば身体的にも精神的にも十分配慮できた状態で対応が出来ていたと思いますが、その際は卵巣を摘出する手術を緊急で行って頂きました。
case2.
50代の男性の患者様で、食後に腹痛があったが今回の腹痛もすぐに治るだろうと様子見を自己判断でされていました。
時間が経つにつれ、どんどん腹部全体の痛みが強くなって来たので診察にてご来院されました。
詳しく問診をすると実は血便が数日前から認めており、その前日に生肉を食べられたとのことでO-157という大腸菌による急性胃腸炎と診断し、すぐに救急病院に搬送いたしました。
結果、急性腎不全をきたしており、集中治療室にて対応となりましたが、応急処置の対応が良く、現在は普通通りに生活されております。
このように腹痛症状には様々な病気が隠れております。
自己判断をせず、まずは医療機関、医師にご相談ください。
急な腹痛の検査・治療なら横浜内科・在宅クリニックへ
当院ではまずは丁寧な問診を行います。
過去に何を食べたかを聞いたり、腹部を聴診いたします。
そして必要であれば超音波検査を行い、腸の動きに異常がないか確認します。
基本的には胃薬を処方させていただきますが、急を要する場合は紹介状を作成し、救急病院へご案内いたします。
ご不安な方はいつでも当院に来院して頂ければ、ご対応させていただきますので、お気軽にご相談くださいね。
まとめ
腹痛は誰にでも起こりうる症状ですが、その原因はさまざまです。
時間が経つと自然に治まる腹痛もあれば、すぐに適切な治療をしないと命に関わる腹痛もあります。
自己診断を安易にせず、異変がある場合は必ずご相談ください。
基本的には腹痛を感じる部位や症状のパターンによって、原因となる病気の見当をつけられます。
また、問診だけで診断できるものもありますが、検査や早急な手術が必要なケースもあります。
今後の生活を守るためにも、腹痛症状がある場合は直ちに医療機関に相談・受診しましょう。
参考文献
急性腹症診療ガイドライン2015
日本臨床外科学会|急にお腹が痛くなったら…
横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師
『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』
【経歴】
・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長
【資格】
・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者