【予防接種】小児の定期接種と任意接種のスケジュールについて

予防接種

皆様、「予防接種」されていますか?

お子さんが元気に育つためには、予防接種はとても大切です。

予防接種を受けることで、さまざまな感染症からお子さんを守ることができます。

今回は予防接種の定期接種と任意接種の違い、予防接種のスケジュールについて説明します。

お子さんの健康を守るために、ぜひ参考にしてください。

目次

予防接種について

予防接種

予防接種法とは

予防接種は、感染症からお子さんを守るために、国が推奨している大事な方法です。

日本では、予防接種法という法律に基づいて、どの予防接種をいつ受けるべきかが決められています。

この法律に基づいて、定期接種と任意接種の2つに分類されます。

定期接種

国が「この時期に必ず受けてほしい」としている予防接種です。

通常は公費、つまり国の負担で受けられるので、費用の心配も少ないです。

任意接種

お子さんの健康状態や家族の状況など、必要に応じて行う予防接種です。

こちらは自己負担での接種になりますが、感染症のリスクを考えて受けることが推奨されています。

お子様だけでなく、インフルエンザの予防接種など特定のシーンに合わせて接種が必要な事があります。

定期接種の種類

予防接種

定期接種には、いくつかの種類があります。

お子さんの健康を守るために、どの病気を予防できるのかを知っておくことが大切です。

Hib(ヒブ)ワクチン

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接種時期

赤ちゃんが生後2か月を過ぎたらすぐに接種開始して、初回接種を含めて全部で4回に分けて接種します。

  • 初回接種…生後2ヵ月~7か月未満
  • 2回目…初回接種から27日~56日
  • 3回目…2回目接種から27日~56日
  • 4回目…3回目接種から7~13か月後かつ1歳を超えたら

Hib(ヘモフィルス・インフルエンザ菌b型)によるリスク

Hibによる感染症は、特に5歳未満の乳幼児に多く見られ、細菌性髄膜炎や肺炎、敗血症などの重篤な合併症を引き起こします。

これらの病気は、迅速な治療が必要であり、治療が遅れると命に関わる危険性があります。

また、治療が成功しても聴力障害や知的障害などの後遺症を残すリスクがあります。

Hibワクチンを適切に接種することで、これらの重篤な感染症にかかるリスクを大幅に減少させることができ、子供の健康を守ることができます。

小児用肺炎球菌ワクチン

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接種時期

Hibワクチンと同じように、5か月目までに3回接種し、最後は1歳~1歳6か月で追加接種を行います。

  • 初回接種…生後2ヵ月~7か月未満
  • 2回目…初回接種から27日以上経過
  • 3回目…2回目接種から27日以上経過
  • 4回目…3回目接種から60日以上経過かつ1歳~1歳6か月の間

肺炎球菌のリスク

このワクチンは、肺炎や髄膜炎を引き起こす肺炎球菌から子供を予防します。

特に乳幼児や高齢者にとって肺炎球菌による感染症は命に関わる危険性があり、早期の予防が重要です。

適切な接種により、これらの重篤な病気のリスクを大幅に減らすことができます。

B型肝炎ワクチン

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接種時期

初回接種は母親がB型肝炎ウイルスを保菌しているかどうかで変わります。

  • 保菌している場合:生後すぐ
  • 保菌していない場合:生後2ヵ月~1歳

生後すぐにワクチン接種することで、母子感染の予防につながります。

  • 2回目接種…初回接種から27日以上経過後
  • 3回目接種…初回接種から139日以上経過後、1歳になるまでに接種

1歳を超えると定期接種の対象外になり、任意接種となります。

B型肝炎のリスク

B型肝炎は、慢性肝炎、肝硬変、さらには肝がんを引き起こす可能性があり、命に関わることがあります。

特に乳幼児期に感染すると、ウイルスが体内に残りやすく、慢性化するリスクが高まります。

そのため、早期の予防接種が非常に重要です。

ロタウイルスワクチン

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接種時期

生後2ヵ月~24週までの間に接種します。

1価ワクチン: 計2回接種
  • 1回目: 生後2ヵ月から生後15週までに接種
  • 2回目: 1回目接種から27日以上空け、かつ生後24週までに接種を完了
5価ワクチン: 計3回接種
  • 1回目: 生後2ヵ月から生後15週までに接種
  • 2回目: 1回目接種から27日以上空けて接種
  • 3回目: 2回目接種から27日以上空けて生後32週までに接種を完了

2種類ありますが、効果に大きな違いはないのと、病院によっては1種類のみの場合があるので、医師と相談して接種しましょう。

ロタウイルスのリスク

ロタウイルスは、乳幼児期(0~6歳頃)に多く見られ、5歳までにほぼ全ての子供が感染すると言われています。

感染すると激しい下痢や嘔吐を引き起こし、重症化すると脱水症状や入院が必要になることがあります。

ワクチンを接種することで、これらのリスクを大幅に減らすことが可能です。

4種混合ワクチン

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接種時期

1期と2期で分かれており、まず1期の生後3カ月後~7歳で4種混合ワクチンを計4回接種します。

2期では11~13歳に、2種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風)、もしくは3種混合ワクチン(ジフテリア、破傷風、百日咳)を1回接種します。

  • 1回目: 生後3か月から接種開始
  • 2回目: 1回目接種から3~8週間後
  • 3回目: 2回目接種から3~8週間後
  • 4回目: 3回目接種から1年後
  • 2期1回目:11歳~13歳未満に2種混合、もしくは3種混合ワクチンを1回接種

4種混合ワクチン未接種によるリスク

4種混合ワクチンは、ジフテリア、百日咳、破傷風、ポリオ(急性灰白髄炎)の4種類の感染症を予防するためのワクチンです。

これらの感染症は、呼吸困難や歩行障害、手足の麻痺など、重篤な合併症を引き起こす可能性があり、特に幼児や小児にとっては命に関わる危険性があります。

また、重症化した場合、長期間にわたる治療や後遺症が残ることもあるため、早期の予防接種が非常に重要です。

BCG

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接種時期

生後5ヵ月~8ヵ月に1回だけ行います。

結核菌に感染することで引き起こる、結核を予防するワクチンです。

結核のリスク

結核は咳、痰、発熱、呼吸困難など、風邪のような症状が特徴です。

また、結核性髄膜炎や肺結核などの重篤な合併症を引き起こす可能性があります。

これらの合併症は命に関わる危険性が高く、後遺症が残ることもあるため、しっかりと予防接種を行いましょう。

MR(麻しん・風しん混合)ワクチン

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接種時期

1歳~2歳に1回接種、5歳以上7歳未満で1回接種します。

麻しん・風しんのリスク

MRワクチンは、麻しん(はしか)と風しんの感染を防ぐための抗体を作るワクチンです。

麻しんは感染力が非常に強く、肺炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こす危険性がある病気です。

風しんは発熱や発疹を伴うことが多く、妊娠初期に感染すると胎児に先天性風しん症候群をもたらすリスクが高いため、成人にも接種が推奨されます。

水痘(みずぼうそう)ワクチン

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接種時期

1歳頃に1回、その3か月以上空けてもう1回の計2回行います。

水痘(みずぼうそう)のリスク

水痘帯状疱疹ウイルスによる水痘(みずぼうそう)に対するワクチンです。

熱性けいれん、肺炎、気管支炎などの合併症に注意が必要な病気です。

ワクチン接種は幼稚園に入る前に完了するのが理想的でしょう。

日本脳炎ワクチン

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接種時期

3歳~4歳に2回、その1年後に1回、9歳~10歳の間に1回接種、計4回必要です。

  • 初回接種: 3歳~4歳の間に2回接種
  • 追加接種: 初回接種から1年後に1回
  • 4回目: 9歳~10歳の間に1回

日本脳炎のリスク

日本脳炎は、蚊を介して感染する日本脳炎ウイルスによって引き起こされる感染症です。

まず突然の高熱や頭痛、嘔吐などの症状が現れ、その後意識障害や麻痺などの神経系の障害が発生することがあります。

重症化すると後遺症が残ったり、命に関わるため適切なワクチン接種を求められます。

HPV(ヒトパピローマウイルス)

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接種時期

2価、4価、9価と3種類のワクチンがあり、それぞれスケジュールが異なります。

HPV(ヒトパピローマウイルス)は複数の型があるため、3種類を接種する必要があります。

2価ワクチン
  • 1回目: 小学校6年生頃から接種を開始します。
  • 2回目: 1回目の接種から1か月後
  • 3回目: 1回目の接種から6か月後
4価ワクチン
  • 1回目: 小学校6年生頃から接種を開始します。
  • 2回目: 1回目の接種から2か月後
  • 3回目: 1回目の接種から6か月後
9価ワクチン
  • 1回目:中学1年生の間に接種を開始します。
  • 2回目:1回目の接種から6か月後

15歳以降に初接種を行う場合

  • 1回目: 任意の時期
  • 2回目: 1回目の接種から2か月後
  • 3回目: 1回目の接種から6か月後

HPV(ヒトパピローマウイルス)のリスク

HPV(ヒトパピローマウイルス)に感染することによってHPV感染症が発生します。

HPVには複数の型が存在し、それに対応するように複数のワクチンがあります。

HPV感染症は、子宮頸がん、肛門がん、膣がん、尖圭コンジローマといった命にかかわる合併症を引き起こします。

適切な接種スケジュールに従ってワクチンを接種することで、これらの深刻な病気から子供を守ることができます。

以上が国から推奨されている「定期接種」です。

数が多く管理するのが大変だと思います。

なのでよろしければ下記のURLをご活用ください!

マイスケジュールをつくろう | ワクチン.net(ワクチンネット)

ご自分だけのプロフィールを作ることができるので便利です。

任意接種の種類

帯状疱疹ワクチン

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接種時期

帯状疱疹ワクチンは、下記の対象に1回接種します。

  • 50歳以上の方
  • 18歳以上の免疫機能不全、または低下している方

帯状疱疹のリスク

帯状疱疹は、水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされる感染症です。

帯状疱疹は、皮膚に痛みを伴う発疹が現れることが特徴で、重症化すると「帯状疱疹後神経痛」という慢性的な痛みを残すことがあります。

また、発疹が顔や目の周囲に出た場合には、視力障害や失明のリスクもあるため、注意が必要です。

帯状疱疹ワクチンを接種することで、発症リスクを大幅に減少させることができ、重症化を防ぐ効果があります。

特に50歳以上でリスクが高くなるため、早期の接種が推奨されます。

関連記事:帯状疱疹はうつる?ワクチンを打つべき理由も解説

おたふく風邪ワクチン

予防接種

接種時期

1歳を過ぎたら1回目を接種します。

そして、小学校入学前の5歳~6歳で追加接種を行うことをおすすめします。

おたふく風邪のリスク

おたふく風邪とは、ムンプスウイルスによって耳の下にある耳下腺が腫れる病気です。

合併症の髄膜炎、脳炎、膵炎、難聴などに注意が必要です。

おたふく風邪による難聴は「ムンプス難聴」と呼ばれます。

ムンプス難聴は、ワクチンで予防できる唯一の難聴と言われています。

3種混合ワクチン

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接種時期

5歳~7歳未満の接種が推奨されています。

ですが、4種混合ワクチンを受けている場合は必要ありません。

また、11~13歳に接種する2種混合ワクチンの代わりに、このワクチンを打ってもいいとされています。

4種混合ワクチンのうち、ポリオを除くジフテリア、百日せき、破傷風を予防するワクチンです。

インフルエンザワクチン

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接種時期

流行に合わせて12月までに摂取できるのが望ましいです。

インフルエンザのリスク

発症予防効果もありますが、最も期待されるのは「重症化」の予防です。

小児の急性脳炎、高齢者や免疫が低下している方の肺炎を防ぐ役割があります。

インフルエンザワクチンは、そのシーズンに流行することが予測されるウイルスを用いて製造されます。

そのため、その年のインフルエンザワクチンを接種しましょう。

関連記事:インフルエンザ予防接種の副作用が出やすい人の特徴とは|大人は腫れがひどい?

23価肺炎球菌多糖体ワクチン

定期接種と任意接種で対象者が異なります。

定期接種は、以下の条件のいずれかに該当する人が1回接種できます。

  • 65歳以上の高齢者
  • 60~64歳で慢性疾患のある方
  • HIV(ヒト免疫不全ウイルス)で免疫機能に障害があり、日常生活が困難な方

任意接種は、肺炎球菌により重篤化のリスクがある以下の方に必要です。

  • 心臓や肺に基礎疾患がある
  • 免疫力が低下している

任意接種の条件に当てはまる方は、接種が必要かどうか医師と相談しましょう。

関連記事:高齢者が肺炎球菌のワクチン接種をするべき理由とは?副作用も解説

破傷風トキソイド

大きな怪我や事故をした方に必要です。

4種混合ワクチンに含まれており、12歳の頃に接種していれば、約10年は免疫が持続します。

しかしそれ以降は効力が徐々に弱まります。

そのため、事前に予防接種を希望する方にもおすすめです。

こちらも合計3回の接種で、ほぼ100%の免疫ができます。

破傷風は破傷風菌による感染症で、主に土に存在する菌です。

そのため傷口から感染した恐れがある場合は、緊急で接種を行うことがあります。

その他のワクチン

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A型肝炎ワクチン

東南アジアなどの流行地域へ旅行される方に接種が推奨されます。

3回の接種で、約5年間はほぼ100%の抗体が作られます。

5年以降は効果が低下する為、10~20年ごとに追加接種することが望ましいです。

A型肝炎とは、ウイルスが肝臓内で感染を起こした状態です。

A型肝炎ウイルスに汚染された水や食物、特にカキから感染することが多いとされています。

黄熱ワクチン

このワクチンの接種証明書がないと、入国審査を通過できない国があります。

そのため黄熱が発生している国に入国、または通過する方は接種が必要です。

1回の接種で黄熱に対する抗体ができ、感染を予防できます。

ただし、いくつかの注意点があります。

  • 接種して10日後から有効になります。
  • 接種後28日間は他のワクチンが接種できません。

黄熱は蚊によって媒介される疾患で、現在でもアフリカ、南米などで地域的流行が発生しているので十分な注意が必要です。

狂犬病ワクチン

動物と触れ合う機会が多い方や、海外に渡航する方に必要なワクチンです。

狂犬病とは、狂犬病ウイルスに感染することで発症し、主に犬や哺乳類に咬まれることで感染します。

咬まれた後に緊急で接種することも可能ですが、事前に接種することが推奨されます。

事前接種は合計3回、咬まれた後の接種は5回必要です。

小児の予防接種のスケジュール

下記に先述した定期接種のスケジュールをまとめました。

是非参考にしてみてください。

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予防接種を受けられないのはどんな人?

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明らかな発熱がある人

明らかな発熱とは通常37.5℃以上を指します。

ですが、平熱が低い方など、人によっては37.5℃を下回る場合も発熱と判断されることがあります。

重篤な急性疾患にかかっている人や免疫機能が低下している人

全身状態が悪い人や免疫機能が低下している人はワクチン接種が出来ない場合があります。

ワクチン接種による副反応が原因で、症状がより重症化する可能性があるので、担当医師の指示に従ってください。

過去に予防接種でアレルギー反応を起こした人

過去に予防接種を受けた際に下記の症状が出た方は、担当医師と十分に相談してから接種を行ってください。

  • アナフィラキシーショック
  • 全身性の皮膚・粘膜症状
  • 喘鳴
  • 呼吸困難
  • 頻脈
  • 血圧低下等

予防接種の種類問わず再発する可能性が十分に高いので注意してください。

免疫機能が低下している人

免疫機能が低下している方には、先天性の免疫不全がある方や、免疫を抑制する薬を服用している方が含まれます。

特定の薬を服用している場合、予防接種が受けられないことがあります。

特に注射ではなく経口摂取するタイプの予防接種には注意が必要です。

対象年齢外の人

予防接種は決められた期間内に行うことが病気の予防につながります。

しかし、接種する対象年齢を過ぎた場合はどうなるのでしょうか?

接種自体は可能ですが、その場合は任意接種となり、全額自己負担となります。

医師が不適当と判断する場合

医師が、当日の全身状態や既往歴・内服薬、副反応の有無を確認し、予防接種可能かどうか判断します。

不適当と判断された場合は担当医と相談して、接種時期を調整しましょう。

関連記事:家族内での感染を防ぐために|ウイルスや病原菌から家族を守る

横浜内科・在宅クリニックでの対応

当クリニックでは定期接種は行っていませんが、「肺炎球菌」と「帯状疱疹」の任意接種を行っております。

ご相談などは随時受け付けているので、お気軽にご連絡くださいね!

まとめ

思い返すと子供の頃にこれだけ多くの注射やワクチンを接種していたんですね。

予防接種のスケジュールを組むのは、非常に大変だと思います。

ご家庭での作成が難しければ一緒に作成させていただくので、お気軽にご相談くださいね!

参考文献

予防接種情報 |厚生労働省

定期接種と任意接種|ワクチン.net(ワクチンネット)

A-02定期接種と任意接種

新型コロナワクチンQ&A|厚生労働省

この記事の監修医師

朝岡 龍博

横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師 

▶詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』

【経歴】

・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長

【資格】

・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者