発達障害とは?診断方法や知的障害との違いについて解説

発達障害

近年、発達障害という言葉を耳にする機会が増えてきました。

しかし、その実態について正確に理解している人は意外と少ないのが現状です。

発達障害を正しく理解することで、本人もサポートする人も日常生活の質を高めることができるでしょう。

本記事では、発達障害の特徴や診断方法、知的障害との違いについてわかりやすく解説します。

発達障害とは?

発達障害

発達障害は、生まれつきの脳の発達における特性です。

ここで重要なのは、これが「能力の遅れ」ではなく「発達の仕方の違い」だという点です。

例えば、言語能力は高いのに対人関係が難しい、記憶力は抜群なのに文字を読むのが苦手といった、発達の偏りとして現れます。

「障害」という言葉が使われているものの、実際には個性の一つとして捉えるべきもといえるでしょう。

その特性を理解し、適切なサポートがあれば、多くの方が社会で活躍できる可能性を持っています。

発達障害の主な種類

発達障害

発達障害にはいくつかの種類があり、それぞれ異なる特性が見られます。

ここでは、主な3つの発達障害の特性について解説しましょう。

自閉スペクトラム症(ASD)

自閉スペクトラム症は、コミュニケーションや社会性に特徴を持つ発達障害です。

他者との関係づくりにおいて、以下のような独自の視点や行動パターンを持っています。

  • 言葉や表情、視線などから相手の考えていることを読み取ることが苦手
  • 特定の分野に強いこだわりを持ち、その分野ではよい結果が出やすい
  • 予定の変更に強い不安を感じ、臨機応変に行動することが苦手

これらの特徴は一人ひとり異なり、年齢とともに表れ方も変化していきます。

注意欠如・多動症(ADHD)

注意欠如・多動症は、不注意や多動性、衝動性の特性を持つ発達障害です。

  • 細かいミスを繰り返したり、忘れ物が多い
  • じっとしているのが苦手で落ち着かない
  • とっさに思いついた行動をとってしまう

以上の特性がある一方、興味のある活動には驚くほど集中でき、独創的な発想や直感的な問題解決能力に優れている面もあります。

これらの特性を活かせる環境では、むしろ大きな力を発揮できます。

学習障害(LD)

学習障害は、全般的な知的能力は問題ないにもかかわらず、特定の学習能力に著しい困難を示す状態を指します。

  • 読字障害(ディスレクシア)
    文字を読んだり、理解することが難しい
  • 書字障害(ディスグラフィア)
    文字・文章を書く、考えた内容を書いて表現するなどが苦手
  • 算数障害(ディスカリキュリア)
    数の概念が身に付かず、計算を取得するのが苦手

このような特性がある一方、芸術やデザインの分野で活躍したり、口頭での説明やアイデアを表現する能力が高い傾向があります。

また、発達障害の兆候としては以下のような傾向が見られることが多いです。

障害の種類特徴
自閉スペクトラム症(ASD)・目を合わせない
・笑い返さない
・後追いしない
・他人に関心を示さない
・こだわりが強い
注意欠陥・多動症(ADHD)・落ち着きがない
・じっと座っていられない
・しゃべりすぎる
・順番を待てない
学習障害(LD)・文字の読み書きが難しい
・簡単な計算ができない

発達障害の原因

発達障害

発達障害の原因は複雑で、さまざまな要因が絡み合っています。

遺伝的要因

発達障害の発症には、遺伝子が大きく関係しています。

研究によると、特定の遺伝子の違いが発達障害のリスクを高めることが分かってきました。

例えば、双子の研究では、一卵性双生児の場合、片方に発達障害があると、もう片方にも同じような特徴が見られることが多いのです。

ただし、これは運命づけられたものではなく、あくまでも傾向の一つとして理解することが大切です。

脳の機能障害

脳の働き方の特徴も発達障害と深い関係があります。

特に前頭葉や側頭葉といった部分での情報処理の仕方が、他の方とは少し異なる処理をすることが分かっています。

例えば、「注意を向ける」「気持ちを切り替える」「人の表情を読み取る」といった機能に違いが見られることがあります。

妊娠中および出生時の環境要因

赤ちゃんがお母さんのお腹にいる時期や、生まれる時の環境も影響する可能性があります。

  • 妊娠中の母体の健康状態
  • 栄養状態
  • ストレス
  • 出産時の状況

とはいえ、これらの要因があったからといって、必ずしも発達障害になるわけではありません。

生後の環境要因

赤ちゃんが生まれてからの環境も、発達障害の特徴の表れ方に影響を与えることがあります。

ただし、これは発達障害を「引き起こす」というよりも、もともとある特徴がどのように表現されるかに関係します。

育て方や環境が原因で発達障害になることはありません。

複合的な要因

発達障害の原因は、上記の要因が複雑に絡み合っていることが多くあります。

遺伝的要因と環境要因が相互に影響を与えながら、発達障害の発症に至ると考えられるでしょう。

発達障害の診断方法は?

発達障害

発達障害の診断は専門的な知識と技術を必要とします。

以下に代表的な診断方法を紹介します。

行動観察・聞き取り調査

診断の第一歩は、丁寧な行動観察と詳しい聞き取り調査です。

専門家は、現在の様子だけでなく、幼児期からの成長過程、家庭や学校での様子、困っていることなどを細かく確認します。

この過程で、本人や家族の悩みや困りごとをしっかりと理解することも大切にされています。

DSM-5による診断基準

専門家は、世界的に認められている診断基準「DSM-5」を使って評価を行います。

これは米国精神医学会が定めた基準で、発達障害の特徴を具体的に示したものです。

この基準により、誰が診断しても同じような評価ができるよう標準化されています。

知能検査・心理検査

必要に応じて、知能検査や発達検査などの心理検査を行います。

これらの検査は、その人の得意分野や苦手分野を具体的に理解するために実施されます。

その人に合った支援方法を考えるための大切な情報になるのです。

MRI等の脳画像診断

場合によっては、MRIやCTなどの画像検査を行うことがあります。

主に、他の医学的な問題がないかを確認するために行われます。

これらの検査だけでは、発達障害そのものは診断できません。

セルフチェックリスト

あくまで一例ですが、以下の項目に多く当て嵌まる方は、発達障害について考えてみるとよいでしょう。

  • 相手が感じていることを理解するのが難しいと感じることがある
  • 集団での活動や仕事をする時に悩みがある
  • 他の方が自分に期待していることや望んでいることを理解するのが難しいと感じる
  • 社交的な場面で、どのようにふるまえばよいのかわからないことがよくある
  • 雑談やおしゃべりが苦手
  • 友達の作り方や人と社交的に付き合う方法がわからないと感じることがある
  • 自分が話す側になるか聞き手に回るかが分からないことがある
  • 相手の表情やしぐさの意味を理解するのが難しいと感じることがある
  • 言葉通りに受け取りすぎて、他の方の意図に気づかないことがある
  • 物事が自分の思い通りにいかないと、非常に動揺することがある

大人になっても発達障害の特徴は見られる?

発達障害

発達障害は子どもの頃に診断されることが多いですが、その特徴は成人期にも持続します。

ただし、年齢とともに症状の現れ方が変化したり、個人が対処法を身につけたりすることで、日常生活への影響が軽減されることもあります。

ここでは、主な発達障害の成人期における特徴を見ていきましょう。

自閉スペクトラム症(ASD)の場合

自閉スペクトラム症(ASD)と診断を受けるのは、子どもよりも大人の方が多いです。

ASDは「相手の立場になり考えることが苦手」「言葉を文字通りに解釈する」といった特徴を持っています。

相手との距離感が掴めなかったり、社交辞令や冗談が通じず、対人関係に困難が生じます。

その結果、仕事に影響を及ぼすこともあるでしょう。

こういった問題を抱え病院を受診し診断を受ける、というケースが増えているのです。

注意欠如・多動症(ADHD)の場合

大人になると、落ち着きがないなどの多動性は少なくなる傾向があります。

しかし集中力の欠如や不注意は、大人になっても残ることが多く、子どもでは許されても、大人になると許されないことが多いです。

この特徴が仕事や人間関係に影響を及ぼしてしまいます。

学習障害(LD)の場合

大人の学習障害(LD)の特徴は、特定の学習や作業に困難を感じることが続きます。

仕事において、「マニュアルが読めない」「メモを素早く取ることが出来ない」といった支障をきたします。

こういった問題からうつ病などの病気を発症することもあるので、注意が必要です。

発達障害と知的障害の違いは?

発達障害

発達障害は、コミュニケーションや読み書き、注意力などの特定の能力に困難さがある状態を指します。

一方、知的障害は、全般的な知的能力が同年齢の平均より低く、日常生活にも支援が必要な状態を指します。

この違いを理解することは、適切な支援を考える上でとても重要です。

以下の表は、発達障害と知的障害の主な違いを表したものです。

特徴発達障害知的障害
知的レベル通常、正常範囲内全体的に遅れがみられる
主な困難コミュニケーション、注意、学習学習、日常生活、社会適応
診断基準DSM-5など知的指数(IQ)70以下など

発達障害との向き合い方

発達障害

発達障害との向き合い方について悩まれる方も多いかと思います。

向き合い方のコツや対策として次のような方法があります。

気が合う人と過ごす時間を長くする

自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症の方には、同じ趣味を持つ仲間と過ごす時間に効果があるといわれています。

同じ趣味を持つ仲間だと、社会人の同好会・サークルなどがあります。

また、ピアサポート(障害のある人自身が、自分の体験談に基づいて相談相手になったり支え合う活動)に参加するのも効果的です。

パニックが起こるシチュエーションを避ける

感覚の過敏さやストレスによって、パニックになりやすい状況は人それぞれ異なります。

例えば、人混みが苦手な方、大きな音が苦手な方、急な予定変更に弱い方などがいます。

自分がどんな状況で不安になりやすいのかを把握し、可能な範囲でそれを避けることは賢明な選択です。

完全に避けられない場合は、イヤホンの使用や、休憩時間の確保など、対処法を事前に考えておくことが有効です。

学習障害の場合はツールを活用

学習障害を持つ方には、スマートフォンやPCなどを活用すると生活を送りやすくすることができます。

中には読むことが困難な方もいるかと思います。

そういった方には、スマートフォンの読み上げ機能や画像認識を活用するとよいでしょう。

家族からのサポートを得る

家族の理解とサポートは、発達障害のある方の生活の質を大きく左右します。

まずは、家族に自分の特徴や困っていることを伝え、理解してもらうことが大切です。

例えば、音に敏感な場合は生活音を控えめにしてもらったり、スケジュール管理が苦手な場合は予定を一緒に確認したりするなど、具体的なサポートを依頼することが効果的です。

ただし、家族に頼りすぎず、できることは自分でやっていく姿勢も必要となります。

専門家・医師への相談

発達障害に関する悩みや困りごとは、一人で抱え込まずに専門家への相談がおすすめです。

医師は症状の改善に役立つ治療法を提案できますし、心理の専門家からは日常生活での対処法について具体的なアドバイスが得られます。

また、必要に応じて福祉サービスの利用につなげてくれることもあります。

定期的な相談を通じて、その時々の課題に適切に対応していくことで、より充実した生活を送ることができるでしょう。

医療機関や相談支援機関に通うことは、決して恥ずかしいことではありません。

自分らしく生きるための大切なステップとして捉えましょう。

横浜内科・在宅クリニックでの対応

症状に心当たりがある場合は、横浜内科・在宅クリニックにご相談ください。

当院では、親身になって診察させていただき、治療法の提案をさせていただきます。

また、一度の往診だけでなく、外来診察に来ていただくことで継続的なフォローアップと長期的なサポートを受けることが可能です。

当院ではオンライン診療も行っており、事前に登録しておく事で、スムーズに受付ができます。

まとめ

発達障害は生まれつきの脳の特徴であり、主に遺伝的要因や脳機能の特性によって生じます。

早期発見と適切な支援が大切ですが、それぞれの特徴に合わせた対応が重要です。

支援ツールの活用や専門家への相談など、様々な方法を取り入れることで、誰もが自分らしく充実した生活を送ることができます。

参考文献

太陽マガジン|発達障害とは?生まれつきの特性?発達障害についてわかりやすく解説!

発達障害とは?種類・症状・進路・発達支援の重要性について

発達障害・知的障害の特徴をチェック!

発達障害の診断・検査方法は?

大人の学習障害(LD・SLD)とは?特徴や症状・診断基準について

解説大人の発達障害との向き合い方

厚生労働省|発達障害の理解

この記事の監修医師

朝岡 龍博

横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師 

▶詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』

【経歴】

・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長

【資格】

・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者