腸重積症とは?症状やロタウイルスワクチンとの関連性を解説
『ママ、お腹痛いよ~!!』、『お腹、苦しいよ~!』と子どもが言ったりするのを聞いたことありませんか?
普段元気で活発なお子さんが、急にお腹を抱えてうずくまったりすると、すごくびっくりしますよね?
子どもがお腹が痛くなる時は、便秘、胃腸炎が特に多いのですが、危ない病気が混じっていることが実はあります!
今回はその中でも『腸重積』といった、病気について小児科医の立場から分かりやすく説明したいと思います。
腸重積症とは?
腸重積の腸とは基本的に胃腸よりも下ある、小腸~大腸の場所のことです。
腸管の一部が連続する腸管の肛門側に入り込み、腸管壁が重なり合った状態が腸重積です。
またこの腸重積によって便が詰まってしまう腸閉塞を起こした状態を腸重積症と定義します。
この腸重積が特に起きてしまう子どもは1歳未満の子が全体の半分を占め、男の子が女の子に比べて2倍多く発生します。
その中でも、生後3か月未満の乳児や6歳以上の学童は少ないです。
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腸重積症の症状
腸重積症には代表とされる3大症状があります。
『腹痛』、『嘔吐』、『血便』の3つで、この3つの症状がともに揃うのは10~50%程度です。
今から各症状について詳しく説明していきますね。
腹痛
不機嫌や泣き止まない、泣き方が普段と違う、膝を「く」の字に曲げるときは、腹痛と判断できます。
この腹痛は、初期には“間欠的”に出現するのが特徴です。
実は『腸』って常に同じように動いていないって知ってました?
15分毎に動いて、便を肛門側に移動させているんです。
腸重積の場合は、腸管が動くと痛みを訴え、運動が停止すると一時的に痛みが和らぎます。
数分間の腹痛の後、15~20分程度の痛みがない時間があり、機嫌良く遊べる位になることもありますが、徐々に痛みが和らぐ時間は短くなることが特徴です。
嘔吐
嘔吐症状は腹痛と同じくらい初発症状として頻度が高いです。
初期の嘔吐は腸管の入り込みによる迷走神経反射が原因と考えられており、吐いたものは食物残渣であることがほとんどです。
また腸管の閉塞により、腸管内容物の通過が障害された状態が続くと、吐いたものは緑色(胆汁性)となってきます。
血便
腸が締め付けられることで血管の圧迫が生じ、腸管壁のむくみが生じます。
さらに進行すると、血管が破綻し出血、粘膜浮腫のため血液に粘液が混じることで、血便が出ます。
発症12時間以内に血便を自然排泄することは珍しく、初発症状として10%程度にしか見られません。
血便の性状は粘液が混じったイチゴゼリー状と表現されますが、便に少量の血液が混じる場合や、鮮血そのものが大量に出る場合などがあります。
腸重積症の原因
リンパ節の腫れ
風邪などのウィルス感染のあと、小腸の終わりに多く存在するリンパ組織が一時的に腫れると、そこが先頭となって大腸側に入り込むことがよくあります。
そのために約1/4の腸重積症の赤ちゃんに感冒症状を認めます。
この病気は、治療が遅れると重積した部分の腸の血液の流れが悪くなって腸管が腐ったり、腐った腸から菌が全身に入り込んでしまうことがあり、早期に診断し治療する必要があります。
腸管の異常な運動
お腹の手術をした後に腸管の蠕動運動が不規則になることで、普段の腸の動きとは違う動きをすることで、腸重積を引き起こす可能性があります。
腸の構造的な異常
メッケル(Meckel)憩室という生まれつき腸管の一部が袋状に残った場合やポリープ、腸管重複症、血管性紫斑病など器質的病変があれば、これらの部分から腸重積がおきやすくなります。
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腸重積症の治療
注腸整復
腸重積症の治療の第一は注腸整復です。
腸重積症の治療は腸の重なった部分を元通りにする必要があるため、発症後24時間以内であれば肛門から空気や造影剤を注入して、腸の重なり合った部分を元通りに戻す注腸整復が行われます。
造影剤などを利用して腸の状態を見ながら行う治療なので、レントゲン室を用いながら行う治療です。
手術
注腸整復で戻らない場合や発症してから24時間以上時間が経っている場合は、開腹手術を行い直接重なった部分を元に戻します。
腸が壊死している可能性があるためです。
経過観察と再発予防
腸重積症は、治療を行っても再発する可能性が約10%程度あるといわれています。
特に注腸整復の場合は約30%が48時間以内に再発する可能性があるため、術後はしばらく様子を見る必要があります。
腸重積症とロタウイルスワクチンの関連性について
ロタウィルスワクチン接種後1~2週間は、腸重積症の発症リスクが通常より高いと報告があります。
これは感冒症状時に腸重積のリスクがあるのと同様で、ワクチンの免疫反応によって頻度が上昇していると考えられます。
生後3か月ごろから腸重積症の頻度が増えて来るので、生後14週6日までに1回目のロタウィルスワクチンを接種しましょう。
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横浜内科・在宅クリニックでできる対応
横浜内科・在宅クリニックでは丁寧な問診、診察、診断を行います。
腹部エコー検査を行うことで、腸重積症に特異的な画像を評価し、消化器疾患に特化しているクリニックです。
ご不安な方はいつでも当院に来院して頂ければ、ご対応させていただきますのでお気軽にご相談ください。
横浜内科在宅クリニック院長 朝岡が実際に経験した例!
3歳のお子さんがお母さんと一緒に夕方ごろ救急外来をご受診されました。
「今日の朝から15分おきぐらいにお腹が痛がって保育園に行けてないです。
痛み方もたまにある腹痛の時と違うので心配になって、近くの病院にいったら胃腸炎と言われました。
ただ、あまりにも痛がる時に辛そうなので再度診てもらいたくて来ました。」
すぐに腹部エコーを行い腸重積に特有の所見(target sign)を確認できたので、すぐに小児科の先生と一緒に注腸造影を行い無事に整復することができ、開腹手術をせず無事に治療することが出来ました。
まとめ
泣き方が普段と違ったり、体を「く」の字に曲げて苦しがっている時や赤く粘り気のあるウンチを確認出来たら早期に医療機関に受診をお願いします。
ロタウィルスワクチンの1回目は生後3か月までに接種し、接種後1週間前後は血便などの症状に注意が必要です。
参考文献
横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師
『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』
【経歴】
・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長
【資格】
・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者