【夏だけじゃない】プール熱の症状や流行時期、コロナとの違いについて

夏になると毎年のように子供たちの中で流行する『夏の三大感染症(手足口病ヘルパンギーナ・咽頭結膜熱(プール熱)』解説シリーズの第三弾となります。

今回は、プール熱と呼ばれている「咽頭結膜熱」について、わかりやすい形で解説していこうと思います。

関連記事:手足口病の症状や潜伏期間、子供だけでなく大人の初期症状やうつる確率について解説

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プール熱(咽頭結膜熱)とは?

プール熱は、正式な病名を咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)といい、大人にも発症することがありますが、よく子どもの間で流行します。

特に、プールの水やタオルなどを介して感染することがあるため、通称として“プール熱”と呼ばれています。

咽頭結膜熱は、これまでお話をしてきた手足口病やヘルパンギーナと同じく感染症法で「5類感染症」に定められており、定点把握疾患(決まった病院が発生数を毎週報告する)となっている感染症です。

まずは、プール熱の概要について説明していきましょう。

プール熱の原因はアデノウイルス?


プール熱の原因は、アデノウイルスと呼ばれるウイルスです。

アデノウイルスは多くの種類があることがわかっており、他の型でも感染を起こすことがありますが、プール熱の原因の多くは3型とされています。

アデノウイルスの感染が必ずプール熱になるわけではありません。

アデノウイルス=プール熱ではなく、以下などの原因にもなるウイルスです。

  • 咽頭炎
  • 扁桃炎
  • 肺炎
  • 流行性角結膜炎(はやり目)
  • 胃腸炎
  • 膀胱炎
  • 膵炎
  • 肝炎
  • 脳炎

乳幼児の急性気道感染症の10%程度はアデノウイルスが原因とされているため、小児では重要な病原体となります。

夏だけじゃない!プール熱の流行時期

プール熱は6月頃から増え始めて、7〜8月にピークが見られます。

プール熱と言われますが、冬にも感染の増加がみられ、季節を問わず発生することがわかっています。

プール熱の感染力と感染経路


プール熱の原因のアデノウイルスは感染力が非常に強く、容易に感染を広げてしまいます。

感染経路は、飛沫感染と接触感染の2種類です。

飛沫感染咳やくしゃみによりウイルスが飛散し、吸い込むことで感染
接触感染汚染された物質に触れた手や皮膚を介して口腔内に感染
ウイルスが含まれたプールの水から目(結膜)に直接感染

プール熱に感染したら幼稚園・保育園・学校に行けるの?

プール熱は、その感染力の強さから学校保健安全法において第二種感染症(インフルエンザ、はしか、おたふくかぜなど)に分類されています。

主要症状が消失した後2日を経過するまでは出席停止とされていますので、感染が判明した場合は幼稚園、保育園、学校を休む必要があります。

また、感染者が増えた(蔓延した)場合は学級、学年、学校閉鎖となる可能性があります。

関連記事:咽頭結膜熱(プール熱)とは?大人もかかる?流行性角結膜炎との違いも解説

コロナとの違いは?プール熱の主な症状

プール熱はコロナにも似ている症状もありますので詳しく見ていきましょう。

プール熱の潜伏期間

プール熱の原因のアデノウイルスの潜伏期間は5~7日程度とされています。

症状が出る2日前ぐらいから周囲への感染力がありますので、潜伏期間にも周囲へ感染させる可能性があります。

プール熱の症状は?


プール熱は潜伏期間の後に、次のような典型的な症状が見られます。

  • 38〜39℃の発熱
  • 頭痛
  • 食思不振
  • 倦怠感
  • 咽頭痛
  • 首のリンパ節の腫れ・痛み

これだけ見ると新型コロナウイルス感染症や、インフルエンザ感染症などとよく似ている症状ですね。

プール熱の症状としては、さらに以下のような結膜炎症状が出ることが特徴的です。

  • 目の充血
  • 眼が痛い(眼痛)
  • 涙(流涙)
  • 目やに(目脂)
  • 目のむくみ

結膜炎は、まずは片方の目に起こりますが、目を擦ったりしてしまうことで1〜2日程度でもう片方の目にも症状が出てきます。

結膜に感染せず、咽頭のみの感染であった場合は、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザ感染症などと変わらない症状となりますので検査して確かめることが必要です。

注意してほしい、新生児へのプール熱の感染


生後14日以内の新生児に感染した場合は全身に感染が広がり、重症化する可能性があるとされています。

稀なケースと思いますが、周囲に感染者がいる場合には注意してください。

プール熱の治療法と回復までの期間は?どのくらいで治る?

プール熱の治療法

残念ながら、プール熱の原因であるアデノウイルスに有効な治療薬はありません。

そのため、解熱剤などの対症療法が基本的な治療です。

眼症状が強い場合は他の菌の重複感染を防ぐ目的で、抗菌薬を含んだ点眼薬を用いることがあります。

プール熱の回復までの期間


プール熱による目の充血や痛み、目やになどの眼症状は症状が出てからおよそ3~5日程度で自然に回復してきます。

また、熱や咽頭痛などの全身症状は症状が出てから1~2週間続くことがあります。


最初にも書かせてもらいましたが、幼稚園、保育園、学校へは症状が消失してから2日間は出席できません。

プール熱の大人の症状は?大人がかかると重症化?

プール熱を引き起こしているアデノウイルスには複数の型があります。

そのため、一度感染したとしても再度感染することも少なくありません。

そのため、大人がかかる可能性もあります。

大人同士で感染が広がることは少なく、大部分は子供からの家庭感染となります。

大人が感染した場合も、子どもと同じような症状を呈します。

そのため、いわゆる「かぜ」として対応されることがほとんどです。

関連記事:アデノウイルスの症状とは?潜伏期間や感染経路について解説

プール熱の感染拡大を防ぐ対策は?アルコール消毒は効かない!?

プール熱の原因であるアデノウイルス感染症にアルコール消毒はまったく効きません。

なので、感染している方やその周囲の方(ご家族)は次のようなことで周囲への感染を防いでいきましょう。

  • マスクを着用する
  • 目をこすったり、さわったりしない(目脂を介しても感染します)
  • しっかりと手洗いをおこなう(流水と石鹸を使いましょう)
  • タオルは家族とわけて使用する
  • リネン類は煮沸消毒(80℃、10分以上)もしくは次亜塩素酸ナトリウムで消毒する
  • ドアノブ、手すりなど触れる場所は次亜塩素酸ナトリウムで消毒する

横浜内科・在宅クリニックでできるプール熱の治療

アデノウイルスに効果がある薬剤は残念ながらありませんので、症状に応じた薬の処方を行います。

「全く水分摂取できない」、「けいれんしている」などの患者さんに対しては、入院の必要性があるため専門の医療機関への紹介を行います。

お困りの症状などがあれば、お気軽にご相談ください。

まとめ

今回は夏の三大感染症シリーズの最後として、プール熱と呼ばれる咽頭結膜熱についてご説明いたしました。

症状からは新型コロナウイルス感染症の除外も必要かと思いますので、子供の発熱と咽頭痛が起きた際はお気軽にご相談ください。

また、感染した場合、幼稚園、保育園、学校を休む必要あるので、診断のためにも医療機関を受診しましょう。

参考資料

厚生労働省ホームページ
国立感染症研究所ホームページ
E-Gov(学校保健安全法) 

この記事の監修医師

朝岡 龍博

横浜内科・在宅クリニック 理事長:朝岡 龍博 医師 

▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』

【経歴】

・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長
・2025年 医療法人 幸龍家 理事長

【資格】

・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者