おたふくかぜの症状や粒状時期について|大人がかかると重症化する?

おたふく風邪

『おたふくかぜ』と聞いてどんなイメージを思い浮かべますか?

両頬のほっぺたなどがふくらんだ様子でしょうか?

聞きなじみのある言葉ですが、実際に見たことがある方は少ないんじゃないでしょうか。

普通の風邪とは違って様々な合併症もある病気なので、注意すべき合併症やその症状について詳しく説明していきますね。

おたふくかぜとは

おたふく風邪

正式名称は、流行性耳下腺炎と言います。

ムンプスウィルスに感染後、約2~3週間の潜伏期間(平均18日前後)を経て発症し、片側または両側の唾液腺(耳下腺・額下・舌下腺)の腫脹を特徴とするウィルス感染症であり、通常1~2週間で軽快します。

最も多い合併症は髄膜炎で、脳炎や難聴・膵炎や、思春期以降では睾丸炎や卵巣炎の合併を認めることがあります。

また約1000人に1人が回復不能な片側性感音性難聴を起こし、時に両側性になることもあります。

患者の年齢は4歳が最も多いです。

続いて5歳、3歳の順に多く、3~6歳で約60%を占めています。

関連記事:おたふく風邪は大人でもかかる?熱が出ないケースもある?

おたふくかぜの症状について

おたふく風邪

耳下腺の腫れと圧痛

ムンプスウイルスに感染した人のうち30-40%で耳下腺が腫れて痛みます。

耳下腺とは、耳の前下方にあり唾液を分泌する唾液腺のひとつです。

その耳下腺が炎症を起こし腫れて痛む状態を耳下腺炎と呼びます。

多くは耳下腺が腫れる前に痛みが出たり、耳の痛みを伴う場合もあります。

耳下腺炎は左右どちらかだけのこともあれば両側のこともあり、多くは最初に片側だけが腫れ、数日後にもう片方も腫れます。

両側に耳下腺炎が起き、腫れた顔の様子がおたふくに似ていることからおたふく風邪と言われています。

ですが、耳の前下方が腫れるのであって頬が腫れるわけではありません。

耳下腺の腫脹は2日目にピークとなり、最長10日間まで続きます。

耳下腺が腫れて痛みがあり、周囲でおたふく風邪が流行している場合や、今までおたふく風邪にかかったことも予防接種を打ったこともない場合は、おたふく風邪の可能性があります。

耳下腺炎を来たす原因にはムンプスウイルスの他にも、コクサッキーウイルス・EBウイルスなどの他のウイルス、黄色ブドウ球菌などの細菌、唾液腺腫瘍シェーグレン症候群などの感染症以外が要因になります。

また耳下腺炎を何度も繰り返す場合、反復性耳下腺炎が考えられます。

唾液管末端拡張症が原因となり、体力が低下した時などに口腔内の常在菌から耳下腺炎を繰り返し起こすことを反復性耳下腺炎と言います。

おたふく風邪は基本的に終生免疫といって一度かかると再びかかることはないので、何度も耳下腺炎を起こす場合には反復性耳下腺炎の可能性があります

反復性耳下腺炎の場合はおたふく風邪のように学校や会社を休む必要はありません

耳下腺炎を繰り返す場合には血液検査でムンプスウイルスの抗体を調べると診断の参考になることがあります。

38℃以上の発熱

耳下腺が腫れる1~2日前に、頭痛や筋肉痛、倦怠感、食欲不振とともに熱が出ることがあり、この時の熱は37~38℃前後であることが多いです。

耳下腺炎を起こすと、その経過と連動して40℃前後の高い熱が1~3日間続くことがあり、高熱が出ている間は耳下腺の痛みも強くなります。

嚥下痛

耳下腺炎を起こした時の最初の自覚症状として、食べ物を噛んだり飲み込んだりした時、特に酸味の強いものを飲み込む際に痛みを感じることが多いです。

おたふくかぜはなぜ流行する?

おたふく風邪

ムンプスウイルスは飛沫感染・接触感染により感染をひろげます。

手洗い、アルコール消毒、うがい、マスク着用などの咳エチケットが予防につながりますが、感染力がかなり強い上に、耳下腺腫脹前からウイルスを排泄したり、感染していても症状が現れない不顕性感染も少なくないため、感染のコントロールは難しいです。

感染から2〜3週間の潜伏期を経て、発熱、唾液腺(特に耳下腺、片側あるいは両側)の腫脹・痛みなどで発症します。

関連記事:麻疹(はしか)の症状|感染力が強い?予防接種や風疹との違いも

おたふくかぜの流行時期は?

季節を問わず発生しますが、冬期から初春に多く発生します。

流行状況の動きが緩慢な点が特徴的な疾患です。

同一地区内でも流行拡大には長期間が必要で、約2年間の流行期と3年間の流行閑期がみられます。

島根県では2014年後半に西部で流行した後、2016年には県内各地域から患者報告が出るようになり、 2017年に入ってからも、8月まで東部・中部及び西部で患者報告数の多い状態が続いていました。

9月以降も東部および中部で患者の報告が続いていましたが、減少しました。

おたふくかぜの注意すべき合併症

おたふく風邪

髄膜炎

おたふく風邪の合併症として髄膜炎を起こすことがあります。

おたふく風邪にかかった人のうち髄膜炎になるのは1%~10%で、男性が多く「女性の3倍」と言われています。

髄膜炎は、耳下腺炎の最中だけでなく前後でも起こることがあります。

ムンプスウイルスに感染して髄膜炎を起こした人のうち、耳下腺炎を伴うのは半分以下で、耳下腺炎を伴わずに髄膜炎を起こすことの方が多いです。

髄膜炎の症状は、頭痛、吐き気・嘔吐、発熱などです。

おたふく風邪にかかり熱が出た場合、それだけでも頭が痛くなることはあります。

発熱や頭痛に加えて吐き気や嘔吐もみられる場合には、髄膜炎を合併している可能性もあるため小児科や内科(神経内科)を受診してください。

髄膜炎が疑われたら髄液検査を行うことがあります。

髄液検査とは脳脊髄液を採取し、その中に含まれるタンパク質や糖の量・細胞の数を検査です。

ムンプスウイルスによる髄膜炎には特別な治療法はなく、症状を軽減させるための対症療法を行いますが、経過は良好であることが多く後遺症を残さずに完治します。

膵炎

おたふく風邪

おたふく風邪にかかった人のうち10%以下で、膵炎を合併することがあります。

おたふく風邪による膵炎は子どもにも大人にも起こります。

耳下腺炎を生じてから1週間前後で膵炎を発症することが多いです。

一般的に症状は軽度ですが、みぞおちや背中の痛み、吐き気・嘔吐、発熱などの症状が出ることがあります。

その場合、膵炎を合併している可能性があるため小児科や内科(消化器内科)を受診してください。

おたふく風邪による膵炎の経過は良好で、1週間程度で軽快します。

睾丸炎(精巣炎)

睾丸炎は、耳下腺炎を発症してから5-10日後に思春期以降の男性の15-30%に起こります。

睾丸炎になると、睾丸の痛み・陰嚢の腫れと赤み・高熱が出ることがあります。

睾丸炎は60-80%で片側性、つまり2個の睾丸のうち1個だけが睾丸炎になります。

おたふく風邪にかかった男性で、耳下腺が腫れてから数日後に睾丸が腫れて痛む場合は、睾丸炎を合併している可能性があるため小児科や内科・泌尿器科を受診してください。

おたふく風邪の予防接種を打ったことのない人がおたふく風邪による睾丸炎になった場合、30-50%で睾丸が萎縮し精子数が減少します。

両側の睾丸炎を起こすと生殖能力が低下することがありますが、非常にまれなことであり、不妊症の原因となることはほとんどないと考えられています。

卵巣炎

思春期以降の女性の5%に卵巣炎が起こり、下腹部痛や発熱・嘔吐の症状が出ます。

経過中に症状が見られる場合、卵巣炎を合併している可能性があるため小児科や内科、婦人科を受診してください。

おたふく風邪で卵巣炎になった場合にも、不妊の原因となることはほとんどないと考えられています。

聴覚障害

おたふく風邪

おたふく風邪にかかると0.01-0.5%で聴力が低下し難聴になることがあり、めまいなどの症状を伴うこともあります。

難聴は片側だけ、もしくは両側に生じます。

難聴は耳下腺の腫脹が治まった後1か月以内に急に生じることが多いですが、徐々に進行していくこともあるので注意が必要です。

聴力は回復することが多いですが、後遺症が残ることもあります。

会話中に聞き返すことが増えたりテレビのボリュームを上げるなど、耳が聞こえにくくなった様子がある場合、難聴を合併している可能性があるため耳鼻科を受診してください。

関連記事:アデノウイルスの症状とは?潜伏期間や感染経路について解説

おたふくかぜに大人がかかると重症化する?

おたふく風邪

まず片方の耳下腺が腫れ、その後70~80%の割合で反対側も腫れてきます。

大人が感染した場合は、40℃を超える発熱・腫れや痛みも強くなることが多いです。

耳下腺の腫れによって口を開けることも困難になり、食事をとることも出来なくなることがあります。

また、症状が出始める1日前~5日後が最も感染力が強いとされています。

おたふくかぜの治療

おたふく風邪

流行性耳下腺炎およびその合併症の治療は基本的に対症療法です。

発熱などに対しては鎮痛解熱剤の投与を行い、髄膜炎合併例に対しては安静に努め、脱水などがみられる症例では点滴での対応をする場合もあります。

関連記事:RSウイルスとは|大人と小児の症状の違いや潜伏期間を解説

おたふくかぜで出席停止に期間は?

流行性耳下腺炎は第2種の感染症に定められており、耳下腺・顎下腺又は舌下線の腫脹が発現した後5日を経過し、かつ全身状態が良好になるまで出席停止とされています。

ただし、病状により学校医その他の医師において感染の恐れがないと認めたときは、この限りではありません。

また、以下の場合も出席停止期間となります。

  • 患者のある家に居住する者又はかかっている疑いがある者については、予防処置の施行その他の事情により学校医その他の医師において感染のおそれがないと認めるまで
  • 発生した地域から通学する者については、その発生状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間
  • 流行地を旅行した者については、その状況により必要と認めたとき、学校医の意見を聞いて適当と認める期間

横浜内科・在宅クリニックでできる対応

当院では検査に加えて、症状に対して適切な薬の処方、使われている市販薬が適切かどうかのアドバイスなども行えます。

お困りの際はお気軽にご相談ください。

また、横浜内科・在宅クリニックでは、病院の診察時間外の夜間休日に患者様のご自宅にお伺いし、診察~検査~処方も行っています。

まとめ

おたふくかぜは日頃から感染対策を行うだけで防げる感染症です。

発熱・耳下腺の腫れや咀嚼時の痛みなどありましたら早期診断・治療をお願いします。

また、合併症にも注意が必要です。

この記事の監修医師

朝岡 龍博

横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師 

▶詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』

【経歴】

・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長

【資格】

・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者