ノロウイルスの原因とは?注意したい食品や予防方法を解説

12月から1月にかけて急増するノロウイルス感染症。

みなさんの中にも、ノロウイルスという言葉を聞いたことがあったり、感染したことがあるという方もいらっしゃるでしょう。

感染すると激しい吐き気や下痢などの胃腸炎の症状が引き起こされます。

もちろん、正しい知識と対策があれば予防できる病気です。

この記事では、ノロウイルスの原因や対策について詳しく解説していきます。

ノロウイルスとは?

ノロウイルスは、激しい嘔吐や下痢を引き起こす感染性胃腸炎の原因ウイルスです。

極めて少量(10〜100個)でも感染する強い感染力を持ちます。

通年を通して感染・発症しますが、特に12月~1月の寒い時期に流行します。

一般的な消毒用アルコールが効きにくいため、予防には塩素系漂白剤による消毒が必要です。

乳幼児や高齢者は重症化しやすいため、十分な注意しましょう。

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ノロウイルスの原因

ノロウイルスによる食中毒

食中毒の主な感染経路は2つあります。

  • 調理者からの感染
    ウイルスに感染した人が調理に関わることで、その手指を通じて食品が汚染されます。
  • 食材からの感染
    ウイルスを取り込んでいる牡蠣などの二枚貝を、生や加熱不十分な状態で食べることで感染します。

このため、飲食店では従業員の体調管理と手洗いを徹底し、体調不良者は調理場から離れることを義務付けています。

家庭での調理でも同じ注意が必要で、特に下痢や嘔吐の症状がある時は、食事の準備は他の家族に任せましょう。

ノロウイルスによる感染症

人から人への感染は、主に次の3つの経路で起こります。

  • 接触による感染(接触感染)
    感染者の排泄物に触れた手指から口に入ることで感染します。
    注意すべきは、症状が落ち着いた後も、しばらくの間ウイルスが体内に残り続けることです。
  • 飛沫による感染(飛沫感染)
    感染者の嘔吐物が床に飛散したときに、ノロウイルスの含まれた飛沫を吸い込むことで感染します。
  • 空気を介した感染(空気感染)
    感染者の嘔吐物が乾燥して空気中に漂い、それを知らずに吸い込んでしまうことでも感染します。
    このため、汚れた場所は速やかに消毒する必要があります。

特に家庭や学校、職場など、人が密集する環境では感染が広がりやすいため、日頃からの手洗いの徹底と体調管理、そして適切な消毒が大切です。

ノロウイルスによる食中毒の原因となる食品

最も注意が必要な食品は、牡蠣やアサリなどの二枚貝です。

これらの貝は餌となるプランクトンと一緒にノロウイルスも取り込み、体内に蓄積します。

しかし、二枚貝だけが原因ではありません。

以下の食品も感染源となることがあります。

  • 牡蠣や生の魚介類
    85℃以上で90秒間十分に加熱する
  • サラダ、カットフルーツ
    洗浄や調理前に手洗いを徹底
  • 調理済みの食品
    調理器具の消毒や手洗いを行う

特に牡蠣は感染リスクが高いため、生食は避けしっかり加熱してから食べることが推奨されます。

関連記事:食中毒になったときの対処法|原因となりやすい食材や予防法も紹介

ノロウイルスに感染したときの症状

ノロウイルスに感染すると、24〜48時間の潜伏期間を経て症状が現れます。

主な症状は以下の通りです。

吐き気・嘔吐

突然の激しい吐き気と噴射するような嘔吐が特徴です。

一日に数回の嘔吐を繰り返すことが多く、水分を飲んでもすぐに戻してしまいます。

脱水予防が重要なため、氷をなめる程度から少しずつ水分を摂取していきます。

スポーツドリンクなどの電解質補給も効果的です。

特に乳幼児や高齢者では嘔吐の頻度が多く、脱水症状を引き起こしやすいため注意が必要です。

重篤な場合は点滴などの処置が必要なので、医療機関を受診することも検討しましょう。

下痢

水のような下痢が一日に3〜8回程度見られます。

これは体内からウイルスを排出しようとするために起こります。

腹痛を伴うことが多く、便は薄い黄色や白っぽい色をしています。

脱水を防ぐため、こまめな水分補給を心がけましょう。

血便が見られた場合は、他の病気の可能性があるため、医療機関を受診してください。

腹痛

周期的に現れる急激な痛みが特徴です。

ウイルスが腸を刺激し、腸内で炎症が起こることで痛みが生じます。

お腹全体がけいれんのように痛むことが多く、下痢や嘔吐の前後で特に強くなります。

温かいタオルで腹部を温めたり、横向きに寝たりすることで和らぐことがあるためおすすめです。

ただし、激しい痛みが半日以上続く場合や、お腹を軽く押しただけでも強い痛みがある場合は、すぐに医師に相談しましょう。

頭痛

ノロウイルスの全身症状として頭痛が現れます。

拍動性の痛みが特徴で、こめかみや後頭部に強く感じられます。

主に脱水症状に伴って起こり、光や音に敏感になることもありるため、暗く静かな環境で休み、水分と電解質の補給を心がけましょう。

激しい頭痛が続いたり、意識がもうろうとする場合は医療機関を受診してください。

発熱

通常37〜38℃程度の微熱が特徴で、感染初期に悪寒を伴うことがあります。

1〜2日程度で自然に解熱するのが一般的です。

38.5℃以上の高熱が続く場合や、3日以上熱が下がらない場合は、他の感染症の可能性もあるため医療機関を受診しましょう。

特に高齢者や小児は、通常より低めの体温でも注意が必要です。

ノロウイルスを予防するポイント

こまめな手洗い

ノロウイルスの予防には、石鹸を使った丁寧な手洗いが最も効果的です。

このウイルスは、感染者が触れたドアノブや食器、タオルなどを介して簡単に広がってしまいます。

また、一般的なアルコール消毒はノロウイルスには効果がないため、念入りな手洗いで予防するしかできません。

効果的な予防のために、以下のタイミングで石鹸による手洗いを心がけましょう。

  • 外出から帰宅した時
  • 食事の前後
  • トイレの使用後
  • 調理の前

手洗いの際は、指の間や爪の下、手首まで石鹸で30秒以上かけて丁寧に洗い、清潔なタオルやペーパータオルでしっかりと水分を拭き取ることが大切です。

食材はしっかりと加熱

ノロウイルスは熱に弱いという特徴があります。

特に注意が必要なのは牡蠣などの二枚貝で、中心部までしっかりと火を通すことが大切です。

具体的には、食材の中心が熱々になるまでしっかり加熱するということが挙げられます。

家庭での調理では、沸騰したスープや煮物なら5分以上煮込む、フライパンで焼く場合は切り分けた後で中心部に生気が残っていないことを確認するなど、確実な加熱を心がけましょう。

電子レンジは部分的に加熱ムラが出やすいので、途中でかき混ぜたり、しばらく置いて温度を均一にしたりする工夫が必要です。

外食時も、生ガキや刺身は避けめにすることをおすすめします。

手すり・ドアノブなどの消毒

ノロウイルスは物の表面で長時間生き続けるため、以下などのよく触れる場所の清掃が重要です。

  • 手すり
  • ドアノブ
  • リモコン
  • スマートフォン

特に注意すべきは、一般的なアルコール消毒では効果が得られません。

消毒には、市販の塩素系漂白剤を水で薄めて使用することが推奨されます。

目安は、水2リットルに対して漂白剤を10ml(ペットボトルキャップ2杯)程度です。

清掃する際は、換気をしっかり行い、ゴム手袋を着用しましょう。

また、金属部分は腐食する可能性があるので、拭いた後は水拭きして乾かすことを忘れずに行ってください。

特に家族に感染者がいる場合は、トイレの水洗レバーや便座、洗面所の蛇口など、共有部分の清掃を1日に2~3回行うことをおすすめします。

排泄物などの処理はマスク・手袋を着用

ノロウイルスに感染した方の吐しゃ物や排泄物には大量のウイルスが含まれています。

これらを処理する際は、使い捨ての手袋とマスク、可能であればエプロンも着用して自分自身への感染を防ぎましょう。

処理の手順としては、まず吐しゃ物や排泄物を使い捨てのペーパータオルで覆い、外側から内側に向かって静かに拭き取ります。

その後、塩素系漂白剤で薄めた消毒液を染み込ませたペーパータオルで、汚れた場所より広めの範囲を丁寧に拭きます。

使用した手袋やペーパータオルはビニール袋に密閉して捨て、最後に石鹸で入念に手を洗います。

関連記事:ノロウイルスとロタウイルスの違いは?症状や二次感染のリスクについても解説

横浜内科・在宅クリニックでできること

横浜内科・在宅クリニックでは、ノロウイルスに関する相談や診療を受け付けています。

症状が現れた場合、家庭での対応だけでなく、医師の診察を受けることで適切な治療が可能です。

さらに当院では、感染症対策に関するアドバイスや、家庭内での予防策についても詳しく説明しています。

また、当院ではオンライン診療も行っています。

自宅に居ながら受診でき、薬は希望の薬局で受け取れます。

ご心配なことや受診方法を知りたいときは、いつでもご相談ください。

まとめ

ノロウイルスは感染力が非常に強く、少量のウイルスでも感染する可能性があります。

日頃からの予防が最も重要で、特に手洗いの徹底と食品の加熱が大切です。

感染した場合は、脱水に注意しながら十分な休養を取り、症状が重い場合は早めに医療機関を受診しましょう。

参考文献

ノロウイルス|「食品衛生の窓」東京都保健医療局

ノロウイルス|予防法|原因と経路|食中毒|便|嘔吐物

【医師監修】ノロウイルスに注意!感染しやすい食べ物は? | アルコール手指消毒剤手ピカジェル |健栄製薬

ノロウイルス感染症の症状 | これからの衛生管理 | 大幸薬品株式会社

この記事の監修医師

朝岡 龍博

横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師 

▶詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』

【経歴】

・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長

【資格】

・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者