高脂血症になりやすい原因とは?脂質異常症との違いや治療について

高脂血症

『健康診断でコレステロールの数値が高い!』

『あ~ぁ、中性脂肪高いなー…』

なんて思った経験ありませんか?

高脂血症とは血中に悪玉コレステロールが増えたり、中性脂肪が多くなった状態のことをいいます。

また、高血圧、糖尿病などに並ぶ生活習慣病の一つです。

この日本でも5人に1人程度が高脂血症が疑われる状態といわれています。

ですが…

いまだに高血圧や糖尿病よりも世間的に認知度が低い病気になります。

すぐに命にかかわるような病気を誘発はしません。

しかし、未治療のままだと、動脈が固くなる動脈硬化がひどくなり、心筋梗塞や脳梗塞といった命に係わる病気の原因になります。

是非この機会に一緒に勉強して、未治療の高脂血症がもしあれば、一緒に治療の一歩を踏み出してみましょう!!

高脂血症とはどのような状態?

高脂血症は下記の3つの要素を1つでも満たせば、高脂血症の診断になります。

1 LDLコレステロール(悪玉コレステロール)が高い

2HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い

3トリグリセライド(中性脂肪)が高い

1つずつ説明していきますね。

まずコレステロールとは脂質の1つです。

ホルモン物質の材料になったり、脂肪の消化や吸収を助ける胆汁酸(*1)の材料になったり、体にとって必要な物質になります。

①LDL-コレステロール

LDL-コレステロールは悪玉コレステロールと一般的に言われているものです。
肝臓で作られたコレステロールのことで、血管を通じて全身にいきわたります。
血液中に悪玉コレステロールが増えることで、血管の壁にへばりついたりして、動脈硬化をきたします。
血液中に140mg/dL以上存在すると高LDLコレステロール血症=高脂血症の診断になり、治療が必要になります。

②HDL-コレステロール

HDL-コレステロールは善玉コレステロールといわれています。
全身にLDLコレステロールがいきわたった後に、回収してくれているコレステロールをHDL-コレステロールと呼びます。
体にとってはいい方向に働いてくれるため善玉コレステロールと呼ばれます。
このHLDコレステロールが血液中に40ml/dL未満と低い値でも低HDLコレステロール血症=高脂血症の診断になります。

③トリグリセライド

トリグリセライドは中性脂肪のことで糖質、タンパク質にならび、エネルギー源の1つになります。
エネルギーの貯蔵庫として、皮下脂肪としておなかのお肉としてためられたり、内臓脂肪として蓄えられたりします。
エネルギーの観点からは非常に良いものではあるのですが、血管内に中性脂肪が多くなると、LDLコレステロールと同様に動脈硬化をきたすことがわかっています。
中性脂肪が血液中に175mg.dL以上(随時採血)=高脂血症の診断になり、治療介入が必要になります

*1胆汁酸(たんじゅうさん)=胆汁に含まれる有機酸、食物として腸に入ってきた脂肪をミセル化して吸収を促進する

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高脂血症になりやすい原因とは

高脂血症の診断に係わる要素は3つ(1 LDLコレステロール、2 HDLコレステロール、3 トリグリセライド)とお伝えさせて頂きました。

これらは主に生活習慣にかかわる要素で変化します。

例えば、運動不足、食生活(過食、間食、食べ物の種類など)、肥満、喫煙、アルコールの飲酒歴が強く関係しています。

このような生活習慣とは関係なく、遺伝的な要因によっておこる『家族性高コレステロール血症といった病気があります。

これはLDLコレステロールの分解ができない遺伝性の病気で、血中内のLDLコレステロールが非常に高くなります。

アキレス腱、肘、膝などに黄色腫(結節状黄色腫とよばれる)を認めることと、家族でも同様に高コレステロール血症を認めることが診断につながります。

他にも以下などが原因で高脂血症を引き起こす場合があります。

  • 甲状腺ホルモンの分泌が少なくなる甲状腺機能低下症
  • 男性ホルモンや女性ホルモンの分泌異常
  • ネフローゼ症候群といった腎臓病
  • 薬の副作用による薬剤性によるもの

また、女性の場合は閉経前後から、女性ホルモンの影響で高脂血症の割合が増えてきます。

女性の方が男性よりも2倍ほど高脂血症になりやすいことがわかっています。

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高脂血症・高コレステロール血症と脂質異常症に違いはある?

高脂血症

実は、『高脂血症(高コレステロール血症)』と言っていたのは昔の話です。

中性脂肪やLDLコレステロール、HDLコレステロールといった複数の要素が関わっていることから、現在は『脂質異常症』が正しい病名です。

しかし大切なのは高脂血症(高コレステロール血症)、脂質異常症といった名前ではなく、どの数値が異常値なのかということです。

中性脂肪が高い人、LDLコレステロールが高い人、HLDコレステロールが低い人、それぞれが同じ薬を使っていたらそれは間違いです。

それぞれに対して適した食生活の指導や治療が必要になってきます。

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高脂血症は血液中の3つの数値(LDL-コレステロール、HDLコレステロール、中性脂肪)が高いか低いかでしか判断できません。

血液中の成分の話なので、異常に高くても、異常に低くても症状として現れることはありません。

そのため、採血を行い結果を見ないとわかりません。

しかし高脂血症のリスクファクターである、肥満、喫煙歴がある方は高脂血症の可能性は高いです。

高脂血症を放置しておくと危険なワケ

高脂血症はまず動脈硬化を引き起こします。

長年蓄積することで血管が詰まったり、狭くなったりして心筋梗塞や脳梗塞といった臓器障害をおこします。

高脂血症自体は症状を引き起こしませんが、症状が起きてからでは治療が間に合わないことも多くあります。

そのため、予防的に高脂血症をコントロールすることが非常に大切です。

全身の血管に対する病気なので、心臓、脳以外にも腎臓や肝臓などほかの臓器にも、もちろん影響を及ぼします。

高脂血症の治療について

まず、なによりも食事療法と運動療法が大切です!!!

食事に関しては食の欧米化が進んでおり、日常的に脂質成分が多いものが増えています。

例を挙げると、ポテトチップスや脂身の多い肉、卵の黄身やイクラなどの魚卵は高脂血症をきたすと考えられています。

一方で、抗酸化作用を持つビタミンC、ビタミンE、βカロチン、ポリフェノールを含むような果物や野菜を積極的に摂取することで高脂血症は改善されます。

ほかにも以下などに気を付けることでコレステロール値や中性脂肪値の改善が見込めます。

  • 食物繊維を多く含む食べものを摂取
  • 油をオリーブオイルに変更
  • 大豆製品をなるべく摂取

運動に関しては、有酸素運動がHDLコレステロールの上昇に有用と考えられています。

また有酸素運動は、同時にエネルギーの消費にもつながるため、中性脂肪の減少にも役立ちます。

基礎代謝もあがるため、脂肪が燃焼しやすい体になります。

無理のない範囲で以下などの有酸素運動を行いましょう。

  • ウォーキング
  • ジョギング
  • サイクリング
  • エアロビクス
  • 水泳

薬物療法は、以下の場合のみ行われます。

  • 食事療法、運動療法ともに行っても改善しない場合
  • 動脈硬化をきたす危険因子が多く早期より治療介入が必要と判断される

下記の表がリスク分類になります。

薬物療法はスタチン系製剤(HMG-CoA還元酵素阻害剤)、陰イオン交換樹脂製剤、省庁コレステロールトランスポーター阻害剤、ニコチン酸誘導体製剤、フィブラート系製剤、EPA製剤といったたくさんの種類の薬があります。

症状に合わせて治療薬を変えます。

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横浜内科・在宅クリニック院長 朝岡が実際に経験した例!

やせ型の高齢女性の方で健康診断でコレステロールが高くて、心配になり受診した方がいました。

ご家族に高脂血症の方はいなく、自分では思い当たるふしはないと言っていました。

普段の食生活を聞くと、ワインが好きでおつまみに毎日チーズを食べているとのこと。

しかも、お酒の量も多くチーズの摂取量もとんでもない量でした!

この方は食生活の改善のみでコレステロール値の正常化を認めました。

横浜内科・在宅クリニックでの対応方法

当院ではまずは、丁寧な問診を行います。

心臓の病気や、家族にコレステロールが高い方がいないか、糖尿病、脳梗塞の既往があるかを確認します。

そして採血を行い、実際に脂質異常症なのかを確認します。

脂質異常症の診断がついた方は血管リスクが高いため、頸動脈を超音波検査にて動脈硬化が進行しているかを確認します。

二次予防をしっかりと行い、食生活の改善、運動療法について指導を行い、必要な方には薬を処方させていただきます。

ご不安な方は、いつでも当院にご来院ください。丁寧に対応致します。

お気軽にご相談くださいね。

まとめ

高脂血症=脂質異常症は高血圧、糖尿病とともに生活習慣病の1つです。

世の中にありふれた病気ではあるものの、しっかりと治療を行わないと脳梗塞や心筋梗塞といった命の危険に及ぼす病気になる可能性が高くなります。

そのため、なるべく早くに治療介入が必要な病気であると認識頂けたら幸いです。

 参考文献

‣動脈硬化性疾患予防ガイドライン2022年版
厚生労働省 平成27年国民健康・栄養調査

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この記事の監修医師

朝岡 龍博

横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師 

▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』

【経歴】

・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長

【資格】

・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者