骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由|副作用や注射治療について解説

骨粗しょう症

こんにちは!!  横浜内科・在宅クリニック院長の朝岡です!! 

皆さん骨粗鬆症(こつそしょうしょう)って知ってますか?? 

早口言葉でよく噛んでしまう言葉で有名な病気です。

これって実は、骨が脆くなってしまう病気のことなんです。

治療せずにほかっておくと腰や足の骨が折れてしまい骨折して動けなくなる原因になります。 

実は骨は硬い組織なのですが、常に古い骨を壊す作業(骨吸収)と新しい骨を作る作業(骨形成)が繰り返し行われており、徐々に成長と同時に硬く強くなっていきます。

しかし骨粗鬆症の方では骨吸収が骨形成を上回ってしまい、骨の強度が下がってしまっているのです。

この骨粗鬆症はたくさんのご高齢者の方が該当する病気になります!

今回は、そんな骨粗鬆法の治療法や予防法について詳しく解説していきますね。

骨粗鬆症の薬の種類

骨粗しょう症

まずは骨粗鬆症に対する治療薬について説明していきますね。

治療薬は主に『A:骨の吸収を抑える薬、B:骨の形成を促進する薬、C:カルシウム製剤』の3パターンになります。

A:骨の吸収を抑える薬(骨吸収抑制薬)

①ビスホスホネート(BP)製剤
リクラスト®、ボンビバ®、ボナロン®、アクトネル®、ベネット®、リカルボン®、フォサマック®、ダイドロネル®
特徴
骨組織に存在する破骨細胞を抑制して骨が溶けるのを抑制します。
内服薬始め、注射薬など様々な薬があり、その人それぞれに合わせてどの薬を使用するか判断されます。
副作用
顎骨壊死、肝障害、低カルシウム血症、消化器症状など

②抗RANKLモノクローナル抗体
プラリア皮下注®
特徴
骨折防止にかなり有効な薬で、骨の外壁(皮質骨)への骨密度増強効果は他の薬剤にない特徴。
6か月に1回の投与
副作用
顎骨壊死、低Ca血症

③選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM: Selective estrogen receptor modulator)
ビビアント®、エビスタ®
特徴
骨密度上昇効果はないが、安全性が高いと考えられている。
また乳がんの予防効果報告がある薬。
副作用
発汗などの更年期症状を悪化させる危険性がある。
また血栓を起こす可能性があり、静脈血栓症がある方には禁忌薬である。

④女性ホルモン
エストラーナ®、ジュリナ®、ウェールナラ®、ホーリン®
特徴
閉経後におきる骨粗鬆症予防、治療において有用と考えらえている。

B:骨の形成を促進する薬(骨形成促進薬)

①活性型ビタミンD3製剤 
アルファロール®、ワンアルファ®、エディロールカプセル®、ロカルトロール®
特徴
食べ物からのカルシウム吸収を促進する薬で、腸から血液中のカルシウム量が増える作用がある。
副作用
高カルシウム血症、急性腎障害、肝障害、黄疸などが生じる場合がある。

②副甲状腺ホルモン製剤
テリボン皮下注®、フォルテオ皮下注®
特徴
副甲状腺ホルモンには様々は血液内のカルシウム量が増える作用があります。
どちらも皮下注射であり、患者さんが使用しにくいといった短所がありますが、骨量の増加を認める薬です。
副作用
高カルシウム血症、悪心・嘔吐、痙攣、腎障害、動悸、倦怠感などがあります。

③カルシトニン製剤
エルシトニン®
特徴
筋肉注射の薬。甲状腺より放出されるホルモンで血液中のカルシウムを骨に置き換える作用があります。
逆に腸管からのカルシウム吸収率は減り、また尿中にカルシウムが排泄される作用があります。
骨は丈夫になるけど、血液内のカルシウム量は低くなるお薬です。
副作用
肝障害、黄疸、悪心・嘔吐、腹痛などの報告があります。

④抗スクレロスチン抗体製剤
イベニティ®
特徴
骨形成、骨吸収どちらにも作用し、骨密度上昇効果が高い薬

C:カルシウム製剤

アスパラ-カルシウム®、リン酸水素カルシウム水和物®
特徴
骨を構成するのは主にカルシウムであり、カルシウム製剤であるアスパラCa錠Ⓡは骨密度を強くしてくれます。
副作用
胃腸障害、腹部膨満感、便秘、胸やけ、頭痛などがありますが、もともと高Ca血症の方には禁忌の薬になります。

骨粗鬆症の薬の効果と副作用

骨粗しょう症

骨粗鬆症治療薬は骨吸収を抑制あるいは骨形成を促進することで、骨密度の維持や改善、椎体骨折や大腿骨骨折などの予防に関係します。

非常に多くの薬剤がありますが、一人一人の状況、例えば骨密度の値や併存症(その他の疾患)、来院可能頻度などに応じて適切な薬剤を選択していきます。

副作用はそれぞれの薬剤で異なりますが、多くの薬剤で血液中のカルシウムの値に影響を及ぼすことによる、副作用が生じる可能性があります。

具体的には、口渇感(喉の渇き)、多尿、下痢、便秘、嘔気や嘔吐、腹痛などがあります。

その他、肝機能障害や腎機能障害も考えられますが、定期的な採血確認をすることで対応することが可能です。

骨粗鬆症の薬が危険といわれる理由

骨粗しょう症

頻度が少ないものの、ビスホスホネート製剤や抗RANKL抗体薬などを長期にわたって使用する場合に生じる可能性があるのが、顎の骨が腐る顎骨壊死(がっこつえし)です。

薬剤投与中は骨吸収が抑制され、骨からカルシウムの流出を抑えることで、骨粗鬆症としての治療効果を得る事ができます。

しかし、歯や歯茎の組織もカルシウムを原料としているため、新しい歯や歯茎を作りにくくなります。

そのためこれらの薬剤使用中の歯科治療、特に抜歯の処置は注意が必要です。

抜歯した後の歯茎が治りにくく、その間に細菌が入り込み、炎症が顎に波及することで顎骨壊死を引き起こす原因となります。

骨粗鬆症治療開始前に一度歯科を受診しておく事と治療中の口腔ケアが重要です。

また、治療中に抜歯処置が必要な場合は一時的に骨粗鬆症薬の中止を検討します。

同じくビスホスホネート製剤の内服に関して、注意点がもう一つあります。

1日1回内服のほとんどの骨粗鬆症治療薬は、内服する時間の決まりはありません。

しかし、ビスホスホネート製剤はかならず起床時に内服します。

ビスホスホネート製剤は体内に吸収がされにくく、食事の前後に摂取すると、さらに吸収率が下がるため、空腹時に内服する必要があります。

また口腔内や食道に薬剤が留まると、粘膜を障害し時に潰瘍を形成する可能性があります。

嚙み砕いたり、口内で溶かすことはせずに、すみやかにコップ1杯程度の水と共に内服し、その後30分程度は横にならない事が重要です。

(内服する際の水は、水道水を含む軟水が望ましい、硬水のミネラルウォーター等はやはり吸収を阻害するため避けるのが望ましい)

これらの観点から起床した時の内服と決められております。

骨粗鬆症の治療選択に関して

骨粗鬆症の治療薬は様々な種類があり、一つの薬でも異なる投与経路、効果持続期間の差があります。

投与経路に関して、内服剤もあれば、貼付剤や注射剤もあります。

また、注射剤に関しては点滴の様に静脈内に投与するものとワクチンの様に皮下あるいは筋肉内に投与するものがあります。

持続期間の差は投与頻度に表れ、毎日内服するものから、週1回あるいは月1回のもの、中には半年あるいは年に1回の注射製剤などもあります。

どの薬剤が良いのかは一人一人異なります。

痛みやビタミン不足があるかどうかなど骨粗鬆症の病態に応じて、他には来院可能頻度や内服可能かどうかなどの因子を考慮の上治療薬を決定します。

骨粗鬆症の治療に即効性はあまりなく、骨密度の上昇もすぐには得られません。

その他に数字などで確認出来る明確な指標が無いため、治療を中断してしまう方が多いと言われています。

薬物治療を始めても1年後には約半分の方が処方通りの内服が出来ていないという報告もあります。

骨粗鬆症の治療効果は年単位であらわれるものであり、自己判断で中断しないことが重要です。

骨粗鬆症の注射治療をするべき人の特徴

骨粗しょう症

骨密度低下が著しい方や、内服継続が困難な方には注射治療を用いる場合が多いです。

骨粗鬆症を放置するリスク

骨粗しょう症

骨粗鬆症は骨折をするまで特に症状がありません。

定期的な検査を施行していない場合、気がつかないうちに骨粗鬆症が進行している可能性があります。

骨粗鬆症になることで骨折しやすいのは以下などが多いとされています。

   ✅椎体(背骨)
   ✅大腿骨近位部(太ももの付け根)
   ✅前腕骨遠位部(手首の辺り)
   ✅上腕骨近位部(腕の付け根)

骨折によって歩行が困難となり、そのまま寝たきりになる可能性があります。

生活の質(QOL)、日常の活動性(ADL)が低下するため骨粗鬆症を予防することは非常に重要です。

骨粗鬆症の検査と診断基準について

骨粗しょう症

骨粗鬆症の検査としては、骨量の指標として骨密度を調べる方法と骨新陳代謝の指標として骨代謝マーカーを調べる方法があります。

骨密度を測定する方法は複数ありますが、代表的なのは、DEXA法で大腿骨や腰椎の骨密度を測定します。

骨代謝マーカーは、採血や尿検査にて測定し、治療薬の選択や治療の効果判定に用いられます。

骨粗鬆症の予防法

骨粗しょう症

骨粗鬆症発症の危険因子として、以下などが知られています。

   ✅女性
   ✅糖尿病・腎不全・骨折の既往
   ✅骨折の家族歴
   ✅喫煙習慣
   ✅飲酒習慣
   ✅ステロイド薬使用

また骨密度には遺伝性の背景があるとされており、危険因子に複数該当する方や家族親族内で骨折がある方は特に注意が必要です。

骨粗鬆症の発症及び進行の予防に有効な手段として運動や食事の工夫があります。

骨密度は1-4歳と12-17歳の2つの時期に上昇するとされています。

骨粗鬆症の発症予防に最も効果的なのは18歳以前に強度のある運動を行い最大骨量を高くすることであると報告されています。

ですが、年代を問わず適切な運動は有効です。

ウォーキングを始めとした有酸素運動で骨密度は上昇するとされていますし、ストレッチだけでも有効といわれています。

ウォーキングであれば、週に3回以上、1日8000歩(30分程度の散歩など)が一つの目安ですが、それ以下でも骨に適度な刺激を与える事に意義があります。

一方食事に関してはやはりカルシウムの摂取が推奨されています。

男女共に1日700mg以上が目安とされ、カルシウムが多く含まれる牛乳・乳製品・小魚、大豆製品などの摂取が重要です。

加えてカルシウムの吸収を手伝うビタミンDの摂取は魚類やきのこ類から、ビタミンKの摂取は納豆や緑黄色野菜から接種することも有効とされています。

一方食塩・カフェイン、アルコールの取りすぎは避けるのが良いと思われます。

その他、カルシウムは紫外線にあたる事で皮膚でも合成されるため、1日15分程度の適度な日照暴露も有効と考えられています。

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横浜内科・在宅クリニックでの対応方法

当院では、採血での血清カルシウム値と骨代謝マーカーの測定が可能です。

その他の検査が必要な場合は、検査可能な医療機関にご紹介致します。

また他院からの薬剤継続処方は対応可能です。

神奈川県で急な往診は横浜内科・在宅クリニックをご利用ください

なかなか骨粗鬆症単体で困ることはありませんが、骨粗鬆症の方は骨がもろく骨折しやすくなっています。

急な腰痛なども他の人よりも出現しやすいです。

夜間、休日で困ることがあれば当院は『家来るドクター』と連携しておりますので、診断、治療含めて診察にお家に伺うことができます。

痛み止めや湿布なども対応可能です。

まとめ

骨粗鬆症は年齢と共に増加する疾患であり、様々な治療薬が存在します。

ただ、薬剤以外にも有効な方法も多く、発症を予防すること、出来るだけ進行させないようにすることが重要です。

治療は即効性があるものではないので、長期的・継続的に向き合っていくことが大切です。

参考文献

日本骨粗鬆症学会:骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン2015

この記事の監修医師

朝岡 龍博

横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師 

▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』

【経歴】

・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長

【資格】

・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者