血糖値が高いときに出る症状や上がる原因|放置するとどうなる?
血糖値とは、血液中のブドウ糖(血糖)の濃度を表す指標です。
ブドウ糖は、私たちの体の主なエネルギー源です。
ブドウ糖は、炭水化物やタンパク質、脂質が、体内で分解されることで作られます。
血糖値は、食事や運動などの生活習慣によって影響を受けますが、通常は体内のインスリンというホルモンの調節によって、一定の範囲内に維持されています。
血糖値が通常より高い状態を「高血糖」と呼びます。
高血糖になると、さまざまな症状が現れます。その原因は患者さんによってさまざまです。
この記事では、血糖値が高い時に出る症状や、血糖値が上がる原因について詳しく解説しています。
ぜひ参考にしてみてください!
- 1. 血糖値が高くなる原因
- 1.1. 糖尿病
- 1.2. 食事
- 1.3. 運動不足
- 1.4. ストレス
- 1.5. お薬や内臓の病気
- 2. 血糖値が高いといわれる数値の基準
- 3. 血糖値が高いときに出る症状
- 3.1. 口渇・多飲
- 3.2. 多尿
- 3.3. 体重減少
- 3.4. 疲れやすさ
- 3.5. 集中力の低下
- 4. 血糖値が高くなりやすい人の特徴
- 4.1. 糖尿病の家族歴
- 4.2. 肥満
- 4.3. バランスの悪い食事
- 4.4. 運動不足
- 4.5. 年齢
- 4.6. 睡眠不足やストレス
- 5. 血糖値が高くなりやすい食事
- 5.1. 炭水化物の多い食事
- 5.2. 砂糖や甘い飲みもの
- 5.3. 脂肪分の多い食事
- 5.4. フルーツジュース
- 5.5. バランスの悪い食事
- 6. 血糖値が高いまま放っておくとどうなるの?
- 6.1. 糖尿病の合併症
- 6.2. 血管へのダメージ
- 6.3. 脱水症状
- 6.4. 代謝性アシドーシス
- 7. 日常生活でできる血糖値を下げる方法
- 7.1. バランスのとれた食事
- 7.2. 適度な運動
- 7.3. 体重管理
- 7.4. ストレスケア
- 7.5. 十分な睡眠
- 8. 病院やクリニックで行われる血糖値を下げるための治療
- 8.1. 食事療法
- 8.2. 薬物療法
- 9. 横浜内科・在宅クリニックでの対応方法
- 10. まとめ
血糖値が高くなる原因
血糖値が高くなる原因はさまざまです。
ここでは、その原因について解説します。
糖尿病
糖尿病は高血糖を引き起こす病気です。
食事をして血糖値が上がると、インスリンが分泌されて血糖値を下げます。
糖尿病になるとインスリンが適切に分泌されなくなり、血糖値が高くなります。
食事
炭水化物中心の食事や甘い飲み物などで糖分を摂取しすぎると、血糖値が上がりすぎてしまいます。
消化された炭水化物はブドウ糖に分解され、血液中に溶け込みます。
これにより血糖値が上昇します。
運動不足
運動不足は、血糖値の上昇に影響を与えることがあります。
運動でエネルギーを使うことでブドウ糖を消費できるからです。
適度な運動は、血糖値を下げる助けとなります。
ストレス
ストレスは体内のホルモンバランスに影響を与え、血糖値を上昇させることがあります。
強いストレスを感じると、ストレスホルモンであるコルチゾールが放出され、ブドウ糖がたくさん作られるようになります。
またストレスがたまると、食べ過ぎてしまいがちなことも原因のひとつです。
お薬や内臓の病気
特定のお薬や病気も、高血糖の原因となることがあります。
これにはたとえば、ステロイド薬の使用や、膵臓の病気、甲状腺の機能が亢進する病気などがあります。
血糖値が高いといわれる数値の基準
血糖値は、健康診断などの血液検査、また、簡易血糖測定器を使ってご自身で測定することができます。
血糖値の基準は、空腹の時と食後とで違ってきます。
正常値と、糖尿病と診断される値について解説していきます。
空腹時血糖値の基準値
正常範囲 | 70〜109 mg/dL |
境界型糖尿病 | 110〜125 mg/dL |
糖尿病型 | 126 mg/dL以上 |
食後2時間の血糖値
正常範囲 | 70〜139 mg/dL |
境界型糖尿病 | 140〜199 mg/dL |
糖尿病型 | 200 mg/dL以上 |
空腹時血糖値は110 mg/dL未満が正常型ですが、100~110 mg/dLの場合を正常高値と評価し、必要に応じて75g経口ブドウ糖負荷試験という試験によって、糖尿病かどうかを判断することがあります。
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血糖値が高いときに出る症状
高血糖になると、以下などの症状が現れます。
✅口渇(こうかつ:口のかわき)
✅多飲
✅多尿
✅体重減少
✅疲れやすさ
さらに糖尿病になってしまうと、視力低下、下肢しびれ、歩行時の下肢痛、自律神経障害、無月経、発汗異常、便秘、下痢、足の潰瘍などの症状がでることがあります。
それぞれの症状と原因について説明していきます。
口渇・多飲
高血糖によって体内の水分が排出されるため、強い喉の渇きを感じることがあります。
この渇きによって水をたくさん飲みたくなることがあります。
多尿
高血糖の場合、腎臓は余分なブドウ糖を尿に排出しようとします。
そのため、尿の量が増え、頻尿になることがあります。
体重減少
血糖値が高くなり、膵臓から出るインスリンが少ない、またはインスリンがうまく作用しないと、食事から摂ったブドウ糖をエネルギーとして使えずに、体の脂肪や筋肉をエネルギー源として分解してしまうため、体重が減ってしまうことがあります。
疲れやすさ
高血糖の場合、ブドウ糖が体内の細胞に取り込まれず、エネルギーが効果的に使用されないため、疲れやすくなることがあります。
集中力の低下
高血糖は、脳のはたらきにも影響をおよぼすことがあります。
注意力や集中力が低下し、思考がスムーズにいかなくなることがあります。
血糖値が高いだけでなく、糖尿病になるとさまざまな症状が現れます。
初期には無症状ですが、放置し病気が進むと、毛細血管がダメージを受けてしまいます。
眼の網膜や末梢神経は血流が豊富なので、糖尿病によりダメージを受けやすい場所です。
そのため、視力低下やしびれ、自律神経障害などが起こることがあります。
さらに高血糖になると、血液の循環が悪くなり、傷の治りが悪くなることがあります。
足の小さな傷や切り傷が長引き、潰瘍ができることもあるため、注意が必要です。
▶︎糖尿病の症状|低血糖・高血糖別の違いは?三大合併症についても
血糖値が高くなりやすい人の特徴
血糖値が高くなる原因は食事だけではありません。
ここでは、血糖値が高くなりやすい人の特徴について解説します。
糖尿病の家族歴
糖尿病には、遺伝的な要因も関わっています。
血縁者に糖尿病がいる方は、糖尿病を発症するリスクが高い傾向にあります。
肥満
肥満の方の場合、脂肪組織がインスリンのはたらきを邪魔してしまうことがあります。
これにより、血糖値が上がりやすくなります。
バランスの悪い食事
高カロリーで糖分や脂肪が多い食事、またはお酒の飲み過ぎは、血糖値を上げてしまうことがあります。
食事のバランスの乱れは、高血糖リスクを高めます。
運動不足
運動不足は、インスリンの効果を低下させ、血糖値を上げやすくします。
定期的な運動は、血糖コントロールのために重要です。
年齢
年齢が上がるにつれて、インスリンのはたらきが低下し、血糖値が上がりやすくなります。
睡眠不足やストレス
睡眠不足やストレスが続くと、血糖値のコントロールがしにくくなります。
ストレスホルモンが増え、これが血糖値を上げてしまうことがあります。
▶︎高血圧の原因になりやすい食事や食べてはいけないものとは?
血糖値が高くなりやすい食事
血糖値が高くなりやすい食事には、以下のようなものがあります。
炭水化物の多い食事
炭水化物は、消化吸収されてブドウ糖へと分解され、血糖値を上げます。
とくに、精製された炭水化物(白米、白パン、砂糖など)は、すぐにブドウ糖に変わるので、血糖値がすぐに上がってしまいます。
砂糖や甘い飲みもの
砂糖や甘い飲みものには糖分が多く含まれており、血糖値を上げる原因になります。
砂糖をたくさん含む加工食品やスナック類にも注意が必要です。
脂肪分の多い食事
血糖値の上昇に大きく影響するのは、糖分や炭水化物ですが、脂質にも要注意です。
脂肪の多いものを食べすぎると内臓脂肪が増え、インスリンが効きづらくなってしまいます。
そのため血糖値を上げる要因になるので、脂肪も取りすぎないように注意することが必要です。
フルーツジュース
フルーツジュースは果糖をたくさん含んでいます。
ジュースでは繊維が取り除かれているため、消化が速く、血糖値を急上昇させてしまいます。
果物そのものを食べるのがおすすめです。
繊維や、ほかの栄養素も一緒に摂ることができます。
バランスの悪い食事
食事において、炭水化物、タンパク質、脂肪のバランスが乱れていると、血糖値が上がってしまうことがあります。
▶︎プリン体を多く摂ると痛風になりやすい?プリン体の多い食べ物とは
血糖値が高いまま放っておくとどうなるの?
血糖値が高いまま放置すると、次のような合併症が起こることがあります。
糖尿病の合併症
糖尿病は、はじめは無症状ですが、未治療で放置すると、さまざまな合併症を引き起こすことがあります。
たとえば、神経障害(神経痛、末梢神経障害)、網膜症(視力の低下や失明の原因)、腎臓の機能障害、循環器疾患(心臓病や脳卒中のリスク増加)などがあります。
血管へのダメージ
高血糖状態は、毛細血管へダメージを与えます。
これにより、動脈硬化(※)が進み、心臓病や脳卒中のリスクが増すことがあります。
血管の内腔にプラークがついたり血栓が生じたりして血管が詰まりやすくなります。
※動脈硬化…動脈の血管がかたくなり、弾力が失われた状態のことをいいます。
脱水症状
高血糖になると、腎臓は余分なブドウ糖を尿と一緒に排出しようとします。
この結果、多尿が起こり、体内の水分が失われます。
このような脱水症状が進行すると、体全体の調子が悪くなってしまうことがあります。
代謝性アシドーシス
重度の高血糖状態が続くと、体内でケトン体と呼ばれる物質が過剰に作られてしまうことがあります。
これにより、血液中の酸性度(※)が上がり、代謝性アシドーシスと呼ばれる状態に陥ります。
代謝性アシドーシスは、意識障害を引き起こしたりと、生命に危険をおよぼすすぐに治療が必要な危険な状態です。
※酸性度…人の体は約60%が 水分でその体液は中性に近い 弱アルカリ性に保たれています。健康維持には、酸とアルカリのバランスを保つことが大切と言われています。
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日常生活でできる血糖値を下げる方法
では、日常生活で血糖値を下げる方法について解説します。
バランスのとれた食事
炭水化物、タンパク質、脂肪のバランスが重要です。
炭水化物は、食物繊維が豊富なものや低GIの食品を選び、食べすぎないようにしましょう。
適度な運動
有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)や筋力トレーニングなどを積極的に取り入れましょう。
運動はインスリンの効果を高め、血糖値を下げてくれます。
体重管理
肥満の方は、減量を目指し、生活にバランスの取れた食事と適度な運動を取り入れましょう。
ストレスケア
ストレスは血糖値の上昇に関わっています。
趣味の時間を大切にしてストレスを発散しましょう。
瞑想など、心身をリラックスさせる時間を取るのもいいですね。
十分な睡眠
規則正しい睡眠パターンを確保し、質の良い睡眠を心がけましょう。
病院やクリニックで行われる血糖値を下げるための治療
血糖値を下げる治療は、お一人ひとりの状態に応じて行われます。
次に、一般的な治療方法のいくつかをご紹介します。
食事療法
医師や管理栄養士のアドバイスを参考に、バランスのよい食事を心がけましょう。
炭水化物、タンパク質、脂肪の量や種類、食事のタイミングなどを見直すようにしましょう。
また、食事内容の記録や、食事の際の血糖値のモニタリングもすすめられます。
薬物療法
糖尿病の場合、血糖値をコントロールするためのお薬が処方されることがあります。
インスリン注射や、経口血糖降下薬などが使用されます。
最近では、さまざまなお薬が使用されています。
横浜内科・在宅クリニックでの対応方法
それでは、当院での高血糖への対応方法を解説します。
問診にて丁寧に現在の症状などをお伺いしたうえ、必要に応じてお薬を処方します。
また、症状や病状に応じ、総合病院など他の医療機関とも連携し治療にあたります。
まとめ
高血糖では、さまざまな症状が現れます。
放置しておくと脳卒中や心臓発作、神経障害、失明など重い病気につながることもあります。
血糖値が高い時には、放置せずに早めに医療機関を受診することが大切です。
高血糖の症状があるものの、病院にいくことが難しい場合には、往診にておうかがいいたします。ぜひお気軽にご相談ください!
参考文献
‣日本糖尿病学会糖尿病診断基準に関する調査検討委員会. 糖尿病の分類と診断基準に関する委員会報告(国際標準化対応版).糖尿病 2012; 55: 485-504.
‣日本糖尿病学会:糖尿病診療ガイドライン2019、南江堂、2019.
横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師
『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』
【経歴】
・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長
【資格】
・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者