花粉症に悩む人たちへ|花粉症の原因と症状について
今回は花粉症のお話です!!
僕は内科医、在宅医としてクリニックを開業するまでは、実は耳鼻咽喉科医としてたくさんの患者さんを診てきました。
その中でもこれからの季節はスギ、ヒノキによる花粉症でつらい思いをする方がたくさん増えてきます。
さらに今年は例年と比べ、5倍近く花粉量が飛んでいるとの報告もあり、より一層僕たちを困らせることになるでしょう。
現在日本を襲っている花粉症について質問形式で詳しくお話しします。
- 1. Q:まず花粉症ってなに?
- 2. Q:花粉症の症状ってなにがあるの?
- 3. Q:花粉症の時期ってあるの? 場所とかも関係する?
- 4. Q:今年(2023年)の花粉症ってどうなの?
- 5. Q:そもそも花粉症になりやすい人っているの?
- 6. Q:花粉症の治療法は何があるのか教えてください。
- 6.1. ①まずは花粉と接触をしないこと
- 6.2. ②内服薬、点鼻薬で調節
- 6.2.1. 1.抗ヒスタミン薬
- 6.2.2. 2.ロイコトリエン拮抗薬
- 6.2.3. 3.点鼻ステロイド薬
- 6.2.4. 4.漢方薬
- 6.3. ③ 舌下免疫療法を行う
- 6.4. ④ 鼻手術を行う
- 7. Q:実際市販の点鼻薬ってどうなの?
- 8. 横浜内科・在宅クリニック院長 朝岡が実際に経験した例!
- 9. Q:横浜内科在宅クリニックで何ができるの?
Q:まず花粉症ってなに?
A:花粉症とは色々な植物の花粉が空気中に飛散し、人間の体内に入ることによって起きる粘膜のアレルギー症状のことを総称して呼びます。
鼻に生じる症状をアレルギー性鼻炎と呼び、目に生じる症状をアレルギー性結膜炎と呼びます。
その中でもアレルギー性鼻炎には花粉による『季節性アレルギー性鼻炎』とダニやほこりによる『通年性アレルギー性鼻炎』の2種類存在します。
なので、花粉症とは『季節性アレルギー性鼻炎』のことなのです。
Q:花粉症の症状ってなにがあるの?
A:花粉症における鼻の3大症状があります。
- くしゃみ
- 透明な鼻水
- 鼻詰まり
また眼の症状としては、眼のかゆみ、充血はほぼ必発で起こります。
先ほど申した通り、花粉症とは粘膜のアレルギー反応になります。
眼、鼻の粘膜以外にも花粉が触れるところには反応します。
例えば、のどの粘膜に反応することで咳やのどのかゆみなどを認めます。
胃腸の粘膜に反応が起きると、下痢や腹痛などがおきます。
また顔などの露出部の皮膚に発赤やかゆみなどをきたすこともあります。
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Q:花粉症の時期ってあるの? 場所とかも関係する?
A:時期と場所は関係します。
日本は花粉症大陸と呼ばれるぐらい花粉が飛んでいます。
下の図は日本アレルギー学会が提示している日本の代表的な花粉とその飛散地域、飛散時期を示した図になります。
日本にはさまざまな花粉が存在しており、中でもスギ花粉(2月~4月)が多く存在しており、花粉症のピークの時期と重なります。
つまり、スギ花粉による花粉症の方が多いということになります。
またこの図で面白いのは日本では花粉量が地域によって違い、時期もそれぞれで違うということです。
日本ではスギ花粉による花粉症でつらい思いをしている人が多い中、沖縄県ではスギ花粉がほとんどみられないので、重度の花粉症の人にしてみると天国のような場所になりえるのです。
また夏頃にはイネ花粉、秋にはブタクサ花粉がでるため、その時期に症状がある方は原因となる花粉が考えやすいです。
Q:今年(2023年)の花粉症ってどうなの?
A:今年の花粉量がかなり多いことがわかっています。
前年度より5倍量を記録していた日もありました。
今年は花粉症をお持ちの方にとってはかなりつらい一年になると予想されます。
Q:そもそも花粉症になりやすい人っているの?
A:2022年度に発表された、日本において1万人程度を対象とした研究結果では花粉症になりやすい人の特徴として以下が挙げられています。
- 若年齢
- 女性
- アトピー性皮膚炎
- ドライアイ
この研究結果ではさらにトマトアレルギーがある方は花粉症症状が強く出るという結果がでており、非常に興味深い結果なのではないかと思います。
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Q:花粉症の治療法は何があるのか教えてください。
A:僕が耳鼻科勤務医時代の経験をもとにひとつひとつ順番に説明してきますね。
①まずは花粉と接触をしないこと
花粉が粘膜と接触しなければ生じないので、原因となる花粉がない地域に逃げることは一つの選択肢です。
実際はなかなか難しいので、窓の開け閉めを工夫したり、マスクや眼鏡を利用して花粉の暴露量を減らす取り組みが非常に有用です。
②内服薬、点鼻薬で調節
A:基本的に病院で治療を行うとなると第一は薬での調節になります。
代表的な薬として以下があります。
- 抗ヒスタミン薬
- ロイコトリエン拮抗薬
- 点鼻ステロイド薬
- 漢方薬
一つずつわかりやすく説明していきますね。
1.抗ヒスタミン薬
抗ヒスタミン薬はヒスタミンというかゆみ物質を制御してくれる薬になります。
内服の利点として全身に効果をもたらすので、目のかゆみ、鼻のかゆみに総合的に効果があります。
また蕁麻疹などの皮膚のかゆみにも効果があります。
副作用として、全身に効いてしまうことで、眠気と口渇(口が乾く)があります。
特に眠気について服用後は自動車の運転は避けるようにと注意書きされている薬もあるので注意が必要です。
薬の歴史は古く、たくさんの種類の薬があり、花粉症の程度や生活面にて薬の調節を行います。
今では薬局で直接購入することができますが、花粉症の程度によって薬の使い分け等もありますので、改善がない場合は専門の病院・クリニックでの調節を推奨します。
2.ロイコトリエン拮抗薬
ロイコトリエン拮抗薬は鼻閉に対して効果がある薬になります。
喘息などのアレルギー疾患の初期のコントロール薬としても使用されており、どなたでも安全にご利用頂ける薬になります。
3.点鼻ステロイド薬
点鼻ステロイド薬は抗ヒスタミン薬だけでは不十分な方には非常に効果的な薬になります。
いわゆるステロイドと聞くとドーピングや筋肉増強する薬と思われがちですが、医学界でのステロイドは炎症を抑えてくれる薬(免疫を抑える)になります。
もちろん内服することで、ある程度症状は改善されますが、全身に作用するため副作用に非常に注意が必要な薬になります。
ステロイドの副作用はかなりあります。
糖尿病、易感染性、消化性潰瘍、血栓症、精神症状、満月様顔貌、動脈硬化、高脂血症、高血圧、むくみ、白内障、緑内障、副腎不全、ステロイド痤瘡、大腿骨骨頭壊死など…。
『ステロイド 副作用』と調べるとたくさんの怖いことが書かれていますが、長期間の使用で起きることは事実なので滅多なことがない限りにはステロイドを処方することはありません。
その点、ステロイド点鼻薬は非常に安全で効果が高い薬になります。
なぜなら、鼻の粘膜から吸収されることで、副作用が少なく済むからです。
1日1回で済むので利用しやすく、効果も得られやすいです。
しかし効果の発現に数日時間を要するため、継続的な使用が必要になります。
4.漢方薬
漢方としては、麻黄とよばれる成分が入っている漢方が花粉症には効果があるといわれています。
代表的な薬として以下があります。
- 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
- 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
- 越婢加朮湯(えっぴかじゅつとう)
そのなかでも『小青竜湯』は花粉症に対して代表的な薬であり、冷えた鼻を温めて、水の循環を良くすることで、余分な水を体から排出し症状を改善させます。
他の西洋医学の薬が十分な効果が得られない場合でも著効することがあります。
③ 舌下免疫療法を行う
花粉症は花粉に対するアレルギー反応であるとお話しさせて頂きました。
この反応の程度には個人差がありますが、この反応に体を慣れさせることで花粉症の症状を和らげる、また完治することができる療法が『舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)』です。
その名の通り、1日1回薬を舌の下に置き徐々に免疫をつけさせる療法になります。
完全な完治にはもちろん個人差はありますが、最低3年以上継続することが推奨されています。
もちろん服用継続中に花粉症シーズンが来ても、通常よりもかなり軽減した状態で過ごせるため、効果の実感がわきやすい治療になります。
また適応年齢が5歳からと比較的幼少期より開始できるので、成人になる前に完治した状態を目指せます。
副作用としてはアレルギー反応が過剰にでてしまう可能性があるということです。
比較的安全に行える治療にはなりますが、副作用として軽症例では蕁麻疹や口のかゆみが出現しますが、重症例ではアナフィラキシー症状がでることもあります。
安全性を見ながら、初回は病院内で服用してもらい、1週間は低用量で試します。
以降は維持量で継続していき、1か月程度で内服フォローとなるのが通常です。
現在舌下免疫療法の薬としてはスギ花粉に対する薬(シダキュア、シダトレン)とダニに対する薬(ミティキュア)があります。
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④ 鼻手術を行う
花粉症の手術というとレーザー治療を思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。
鼻の中の空気の通り道を主に支配しているのが『下鼻甲介(かびこうかい)』と言われる部分です。
花粉症の方はこの部分が腫脹しており、透明な鼻汁で埋め尽くされているので鼻詰まり症状がでるのです。
いわゆるレーザー手術(下鼻甲介粘膜レーザー焼灼術)はこの下鼻甲介粘膜を焼灼することで、鼻水を出す神経に作用し、鼻水を出にくくさせます。
また粘膜も縮小するため、鼻通りもよくなります。
しかしこの施術は一時的!です。
指をやけどをしても割とすぐ治るのと同じです。
鼻の中でも同様のことが起きているだけなので、あくまで一時的な処置になります。
毎年レーザー治療を行う人がいるのはこのような理由からです。
根本的に治したい場合は鼻腔の表面上の神経を焼灼するのではなく、中枢神経である後鼻神経(こうびしんけい)を切断をすることで花粉に対する反応が起きなくなります。
この手術を後鼻神経切断術(経鼻腔翼突管神経切除術(けいびくうよくとつかんしんけいせつだんじゅつ))といいます。
全身麻酔で行う手術になるので、入院が可能な病院に限定される手術になります。
Q:実際市販の点鼻薬ってどうなの?
A:市販で売られている点鼻薬や即効性のある点鼻薬が処方された場合は注意が必要です。
それはステロイド成分ではなく、強制的に血管を収縮させることで鼻の粘膜を縮め、鼻の空間を広げ、鼻詰まりを解消する点鼻薬のことが多いです。
即効性があって、鼻通りが良くなっていいと思われますが、時間がたつともとに戻り、1日に何度も使用しないと解消されません。
頻回使用をし続けると鼻の粘膜が正常に反応しなくなり、逆に鼻詰まりの原因となっている方が散見されます。
僕は一時的に使用するのはよしとしますが、花粉症による鼻詰まりで困っているのであれば、ステロイド点鼻薬をまずは推奨することとしています。
横浜内科・在宅クリニック院長 朝岡が実際に経験した例!
毎年、花粉症のシーズンがくると鼻詰まりがひどく、目薬、鼻炎薬、内服薬などをたくさん飲んでいた方がいました。
市販の点鼻薬も大量に使用しており、薬も効かない状態になっていました。
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舌下免疫療法である、シダキュアを開始したところ、次のシーズンには薬もいらなくなっていました。
Q:横浜内科在宅クリニックで何ができるの?
A:当院は横浜都筑区にあるクリニックですので、花粉と接触を避けられないクリニックになります笑。
なので、内服薬、点鼻薬などで調節を行います。
基本的にはこの治療でシーズンを乗り越えられる方が大半ですが、中には鼻腔が狭く少しの花粉症でかなりひどい症状をきたす方がいらっしゃいます。
そのような方には鼻手術をお勧めさせて頂き、希望がある方は手術可能な病院にご紹介させて頂きます。
また当院では舌下免疫療法も小児は5歳から成人まで行っておりますので、シーズンオフの時は希望がある方は行うことが可能です。
もちろん他院での治療経験がある方もしっかり対応してみさせていただきますのでよろしくお願います。
【参考文献】
●Individual characteristics and associated factors of hay fever: A large-scale mHealth study using AllerSearch. Inomata T Allergology International
●日本気象協会 『花粉情報 スギ花粉が最盛期 関東~九州は連日のように「大量飛散」 ピークいつまで』