汗が臭い原因と対策を男女別にわけて解説|匂いの特徴についても

汗ニオイ

皆様は「自分の汗の匂いが気になって仕方がない」と感じた経験はありますか?

ある日の夏、私は仕事で病院に向かっておりました。

その日は非常に暑く、朝から気温は30度を超えておりました。

歩いていると汗が流れ、服が身体にぴったりと張り付き不快感が増していきました。

首筋や背中には汗が滴り落ち、べたつく感覚が残ります。

職場に到着し、私は汗をかいた後も念入りに体を拭いたり、制汗剤を使用したりしていましたが、それでも臭いは気になって仕方ありませんでした。

職場の先生方と近くで話をしている時には、自分の臭いが他の人にも気付かれているのではないかと心配になりました。

皆様もこのエピソードのように、汗の臭いが気になってしまい、人前での自信が揺らぎ、楽しい場面でも不安を感じてしまったことがあるのではないでしょうか。

そこで今回の記事では、汗が臭くなる原因と対策を、男女別にわけて解説していきたいと思います。

汗が臭い原因

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一般的に、汗自体の成分は主に水とミネラルで構成されており、汗自体にはほとんど臭いは無いと言われています。

いわゆる汗の臭いとは、私たちの皮膚表面に存在する細菌と汗が反応することによって生じます。

細菌は汗の中の成分を分解し、「脂肪酸」や「アンモニア」などの物質を生み出し、これらの物質が皮膚表面に滞留することで、特有の臭いが生じるのです。

人の汗腺(汗を分泌する穴のこと)には「エクリン腺」「アポクリン腺」の2種類があります。

「エクリン腺」はほぼ全身にあって温熱刺激や緊張によって汗を出します。

一方で「アポクリン腺」は腋窩(脇の下)や外陰部(性器の近く)に分布し、思春期になると性ホルモンの影響を受け、汗が多くなります。

匂いを生じる汗は、ほとんどが「アポクリン腺」です。

▶︎ワキガになる原因とは|どんな匂い?治療法や治し方について解説

汗の匂いの特徴

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酸っぱい匂いは「脂肪酸」という物質が関与しており、刺激的な尿のような臭いは「アンモニア」という物質が関与しています。

また、生臭い匂いは細菌が汗の中の成分を分解することで生じます。

汗の臭いは個人の体質、遺伝的要因など先天的要因にありますが、食事、生活習慣などで改善が可能です。

一般的に健康的で良い匂いの汗は、淡く軽やかな香りを持ちます。

これは俗説ではありますが、フェロモンの作用もあると考えられます。

フェロモンは、化学的な物質の一種で、生物間で情報を伝達するために分泌される化学物質です。

同種の個体に対しては、性的魅力や繁殖行動の刺激、社会的な結びつきの促進などの効果があるとされます。

しかし、その具体的な効果や役割についてはまだ解明されていません。

▶︎加齢臭がする原因と対策を解説|どんな匂い?何歳から匂う? 

暑くなると汗は臭くなりやすい?

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暑くなると以下の3つの要素が重なり、汗臭くなりやすいとされています。

   ✅汗の分泌量の増加
   ✅細菌の繁殖
   ✅密着度の高い衣服の着用

当然ですが、暑さの刺激で汗の量が増えると、汗が皮膚表面に存在する細菌と反応する機会が増え、臭いが発生しやすくなります。

また、通気性の低い衣類を着ていると汗が蒸発せず湿った状態が続き、細菌の繁殖を促進してしまいます。​​

夏は普段以上に衛生に気を遣い、適度な制汗剤を使用する、通気性の良い衣類を選択するなど、個々の対策を行うことで、汗の臭いを軽減することができるでしょう。

▶︎足の臭いが洗っても取れないのはなぜ?|内臓が原因?治し方を紹介

汗が臭いのとワキガの違いは?

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ワキガとは、一般的には特に脇の下から発生する濃い体臭のことを指し、医学的には「腋臭症(えきしゅうしょう)」とも呼ばれます。

原因としては「アポクリン腺」からの汗が皮膚表面に存在する細菌と反応し、特有の臭いが発生します。

「アポクリン腺」は上記の通り、主に脇の下や陰部周辺などに存在します。

ワキガの人は「アポクリン腺」が発達しており、数も多いため汗の分泌量が多く、それだけ強い匂いになってしまうのです。

ワキガに悩む人は日常生活や社会的な交流で困ることが多く、心理的な負担を感じてしまいます。

ワキガの対策としては、まずは皮膚表面の細菌を減らすため、洗浄により脇の下を清潔に保つ必要があります。

しかし、ワキガは一般的な体臭とは異なり、個人の衛生状態や洗浄の度合いに関係なく発生することがあります。

そのため、重度の場合は薬物療法や手術治療が検討されることがあります。

汗腺や神経を切除する手術やボトックスという注射が使用されます。​

▶︎ワキガになる原因とは|どんな匂い?治療法や治し方について解説

男性の汗が臭い原因と対策

テストステロンによる影響

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テストステロン(男性ホルモンの代表)の影響によって「アポクリン腺」からの汗の分泌が増加します。

これが皮膚表面の細菌と反応することで特有の臭いが生じるとされています。

一般的に男性は思春期の時期に成長に伴って性ホルモンの分泌が増加し、症状が発現します。

男性はテストステロンの値が高いため、女性に比べ強い体臭を経験しやすいと考えられています。

運動や食生活による対策など

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食品に含まれる成分は、体内で代謝される際に影響を与えることがあります。

特に強い香辛料や刺激物、ニンニク、タマネギなどの食品は、消化過程で化合物が生成され、汗の臭いを強める可能性が指摘されています。

赤身肉の大量摂取も腋臭を増強させる可能性があるそうです。

匂いが気になるときは食べ過ぎに注意が必要ですね。

また、前述した「脂肪酸」という物質は、名前の通り脂肪から分解されて作られます。

普段から脂肪を多く摂取している方や、メタボリックシンドロームを指摘されている方は「脂肪酸」の分泌量が多くなると考えられます。

また、「アンモニア」は摂取したタンパク質から分解されて作られます。

通常、「アンモニア」は肝臓で分解され「尿素」となり尿として排泄されます。

しかし、便秘気味の方で食物が腸内に停滞し多量の「アンモニア」が作られていたり、肝機能が低下している方で「アンモニア」が分解しきれていないと、汗から「アンモニア」が分泌されてしまいます。

「脂肪酸」も「アンモニア」も、いずれも生活を改善することで汗からの分泌を減らすことが可能です。

アポクリン汗腺は感情発汗やストレスにより分泌量が増すため、 運動でストレスを発散することで腋臭の軽減に有効である可能性があるとも言われています。

運動習慣をつけ、食事を節制することが汗の匂いの軽減につながるのです。

▶︎高血圧の原因になりやすい食事や食べてはいけないものとは?

女性の汗が臭い原因と対策

生理や更年期による影響

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生理中は、血液や分泌物がデリケートゾーンに留まるため、細菌の増殖が起こりやすくなります。

これにより細菌が血液や汗を分解し、特有の匂いを生じます。

更年期障害は、卵巣の機能が低下し、エストロゲンやプロゲステロンなどの女性ホルモンの分泌量が減少することによって引き起こされます。

これにより、体温調節のメカニズムが乱れ、熱を放散するために汗をかくことが増えます。

デリケートゾーンのケアによる対策

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デリケートゾーンは名前の通りデリケートな部位ですので、優れた衛生習慣を保つことが重要です。

毎日のシャワーや入浴を欠かさず行い、優しく洗浄することで清潔さを保ちましょう。

洗浄後は十分にすすぎ洗いし、乾燥させることも重要です。

​​また、下着の素材も重要です。

合成繊維やタイトな下着は湿気をため込み、蒸れを引き起こすため、通気性のある綿素材や吸湿性の高い下着を選ぶことで通気性を確保することができます。

​​長い毛髪は湿気や臭いの原因となるため、必要に応じてトリミングやシェービングを行い、清潔さを保ちましょう。

病院やクリニックでの治療について

治療はまず生活習慣を見直すことから始まります。

不規則な日常生活や喫煙習慣などを改善しましょう。

脇の下・陰部の毛を定期的に処理し、毎日の洗浄により清潔に保つことも重要です。

市販の制汗剤も一定の効果を出すと言われています。 

上記の保存的加療が奏功しない場合、ボツリヌス毒素の局所注射や塩化アルミニウム溶液の外用剤も有効です。

臭いが強い方は、アポクリン腺が多く分布する層を切除する手術療法も適応となります。

上記のワキガ以外の原因として、下着やシャツが汗だくになる「原発性局所多汗症(げんぱつせいきょくしょたかんしょう)」という病気も考えられます。

こちらは抗コリン外用薬であるエクロックゲルという塗り薬が昨年承認されました。

2~3週間続けていただくと汗の量が減ってくるとされています。

飲み薬としては、プロバンサイン、ポラキス、ベシケアなどがありますが、効果の程度にはばらつきがあります。

また口の渇きや眠気などの副作用があります。

医師の指示に従い治療を受けましょう。

横浜内科・在宅クリニックでの対応方法

汗の匂いに悩む人は日常生活や社会的な交流で困ることが多く、心理的な負担を感じてしまいます。

当院ではそのような方に対し、まずは丁寧な問診・視診を行います。

そして生じている症状に対し治療介入が必要か否かを判断いたします。

多汗が原因であれば飲み薬・塗り薬の処方が必要であり、その方にあった薬を処方させて頂きます。

ワキガで薬物治療が奏功せず、外科的処置が必要な場合は、高次医療機関へ紹介状を書くことも可能です。

何かお困りのことがございましたら、気軽に当院にご相談くださいね。

神奈川県で急な往診は横浜内科・在宅クリニックをご利用ください

急に汗が出て止まらない場合、内科的疾患が原因の可能性もございます。

甲状腺の機能異常や、何らかの細菌の感染により発熱をきたしていることも考えられます。

放置している間に脱水が進んでいることもあり、まずは身体診察が必要です。

当院の外来時間外には、【家来るドクター】として往診も行っているためいつでもお気軽にご相談ください。​​

まとめ

汗の匂いは多くの人にとって気になることです。

医師である私自身、自分の臭いが他の人にも気付かれているのではないかと心配になることがあります。

汗は体温調節や代謝の一環として必要な生理現象です。

しかし、その匂いは個人によって異なり、また外部要因や生活習慣によっても影響を受けます。

汗の匂いに悩む場合は、個人の生活環境や体質に合わせた対策を試してみることが大切です。

それでも持続的な汗の匂いや異常な体臭に悩んでいる場合は、医師に相談することをおすすめします。

「考えすぎかな」と思わずに、専門家の助けを求めてください。

受診はあなたの健康を守るための第一歩です。

心配せずに、医師に相談してみましょう。

参考文献 

日本皮膚科学会|皮膚科Q&A【汗の病気】

この記事の監修医師

朝岡 龍博

横浜内科・在宅クリニック 院長:朝岡 龍博 医師 

▶︎詳しいプロフィールはこちらを参照してください。

『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』

【経歴】

・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長

【資格】

・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者