脱水症状はどんな状態?原因やチェック項目を医師が解説
脱水症状は、私たちの健康に大きな影響を与える可能性のある重要な問題です。
特に暑い季節や運動時には、体内の水分バランスが崩れやすくなります。
今回は脱水症状について詳しく説明するので、今年の夏に向けて予防や対処法を身につけましょう。
脱水症状とは?
脱水症状とは、体内の水分が不足した状態です。
体内の水分の中には電解質という水に溶けると電気を通す物質が含まれており、筋肉細胞や神経細胞の働きにかかわるなど体にとって重要な役割を果たしています。
この水分と電解質を適切なバランスで維持する必要がありますが、このバランスが崩れると様々な健康問題が生じます。
脱水は軽度から重度まであり、重症化すると命にかかわることもあるため注意が必要です。
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脱水症状の原因
脱水症状の原因は多岐にわたります。
主な原因は以下などです。
ここでは、上記の主な原因について解説しましょう。
大量の発汗
激しい運動を行うと、大量の汗をかくことにより水分と電解質が失われます。
特にマラソンやサッカーなど長時間にわたる運動では発汗による脱水には注意が必要です。
また、サウナやじっとしているだけでも汗をかいてしまう高温多湿の環境に長時間いると、体温調節のために汗をかく量が増え、脱水症状を引き起こしやすくなります。
不十分な水分補給
十分な水分を摂取していない、または水分補給が難しい場合、脱水症状を引き起こします。
体内に補給される水分よりも失われる水分が多くなることで引き起こします。
高温多湿の環境下でなくても、水分が不足して脱水症状を引き起こす場合もあるため注意が必要です。
病気
胃腸炎などにより嘔吐や下痢、発熱などの症状が続くことで水分が失われます。
嘔吐や下痢が続くと、体内の水分が急速に失われ、脱水状態になる可能性が高まります。
特に、ロタウイルスやノロウイルスによる急性胃腸炎は脱水症状を引き起こしやすいため注意が必要です。
薬の使用
服用している薬が影響して脱水症状になる場合があります。
薬の種類によっては利尿作用があり、尿の排出によって必要な水分が不足して脱水症状を引き起こすのです。
特に、高血圧や心臓病などの治療で処方される利尿剤は、体から過剰に水分を排出するため脱水症状を引き起こしやすくなります。
このような利尿剤を使用している場合は、適切な水分補給を心がけ脱水症状にならないように予防が必要になります。
その他の要因
アルコールやカフェインは利尿作用があるため、多量に摂取すると尿として水分が排出されやすくなり脱水症状を引き起こします。
また、塩分の多い食事はチア内の水分を奪う作用があるため、脱水を助長することがあります。
脱水症状で見られる症状
脱水症状には様々な症状があります。
主な症状は以下の通りです。
ここからは、主な症状について解説しています。
頭痛
脱水症状の初期段階で現れることが多いのが頭痛です。
体内の水分が不足すると、血液量が減少しの上の酸素供給が不十分になるため、頭痛を引き起こします。
また、体の水分バランスの乱れが原因となり脳の血管が収縮し、頭痛を引き起こすこともあります。
吐き気・嘔吐
脱水により胃腸機能が低下することで、吐き気や嘔吐が生じることがあります。
体内の水分と電解質のバランスが崩れることで胃腸の働きを妨げ、消化不良や胃の不快感を引き起こします。
特に、下痢や嘔吐が原因で脱水が進行している場合は、症状が悪化しやすいため早めの対処が必要です。
下痢
下痢自体が脱水症状の原因の一つですが、脱水症状が進行するとさらに下痢が悪化します。
体が水分を保持しようとするために腸の吸収能力が低下し、結果的に水分の多い便が排出されるようになります。
特に、小児や高齢者は下痢による脱水症状が重篤化しやすいため注意が必要です。
寒気
脱水症状が進行すると寒気を感じることがあります。
体内の水分が不足すると、血液の循環が悪くなり、体温調節機能が低下するため寒気を感じやすくなるのです。
特に高温環境下での脱水は体温調節に大きな影響を与えます。
めまい
脱水によって血液量が減少すると、脳への血流が不足し、めまいを引き起こすことがあります。
特に脱水状態では、体内の水分が減ることで血液量も減少し、脳への酸素と栄養供給が滞りやすくなるため、酸素不足が原因でめまいを感じやすくなります。
また、血液量が減少すると血圧も低下しがちです。
急に立ち上がったり姿勢を変えたりした際に血圧が急激に下がると、起立性低血圧と呼ばれる状態になり、立ちくらみやめまいを引き起こしやすくなります。
立ちくらみやめまいを防ぐためには、座った状態からゆっくりと立ち上がることが効果的です。
高体温
水分不足により体内の電解質バランスが崩れると、体温調節機能がうまく働かず、体温が上昇しやすくなります。
また、体内の水分が少なくなることで血流が悪くなり、体に熱をため込みやすいです。
このようなことから、脱水症になると体温が上昇しやすくなると言えます。
特に暑い環境下では、高体温が脱水症状の一部として現れることが多いです。
意識障害
重度の脱水症状では、意識障害が発生することがあります。
脳への血流と酸素供給が著しく低下するため、混乱、無気力、意識の低下、場合によっては意識喪失が見られることがあります。
意識障害が見られた場合、すぐに医療機関に受診し、適切な処置を受ける必要があるため注意が必要です。
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脱水症状のチェック項目
脱水症状かも?と体調が少しでもおかしいなと感じたら以下のチェック項目を利用して確認してみましょう。
当てはまるものがあれば適切な対処を行い、必要に応じて医療機関を受診しましょう。
| チェック項目 | ポイント |
| 握手してみる | 脱水症状になると体内の水分が不足し、手が冷たくなることが多いため、手を握ってみて冷たいと感じる場合、脱水症状の疑いがあります。 |
| ベロ(舌)を見る | 脱水症状ではベロ(舌)がカサカサしていたり、表面がひび割れるようになったりすることがあります。 |
| 皮膚をつまむ | 皮膚には水分がたくさん含まれていて弾力があります。 脱水症状になると水分が減り弾力がなくなるため、皮膚をつまんでチェックしましょう。 皮膚を軽くつまみ、話した後つままれた形から3秒以上戻らなければ脱水症状が疑われます。 |
| 親指の爪先を押す | 脱水症状になると血流が悪くなり、色の戻りが遅くなることがあります。 親指の爪先を押した後、赤みが戻るのに3秒以上かかれば脱水症状が疑われます。 |
| わきの下を確認する | 脱水症状になると汗の分泌が減少するためわきの下が乾燥します。 特に汗をかきやすい環境や運動後の脱水症状のチェックに向いています。 |
脱水症状の治し方
脱水となった場合、体力を消耗していることが多くあるため、安静にしましょう。
また、室温が高い場合、脱水症状を助長するため、室温を快適な温度に保つことも重要です。
脱水と聞くと、”どんどんお水を摂取させよう”と思いがちですが、真水を飲むとさらに体液が薄まり、低ナトリウム血漿を進行させてしまいます。
そうすると、脳細胞浮腫などを引き起こし重篤な神経症状が合わられることがあります。
飲むのは水ではなく、経口補水液やスポーツドリンクなどの体液の濃度にも配慮された飲み物を飲むようにしましょう。
また、脱水は分類によって輸液の種類が変わるため、落ち着いたらかかりつけ医などへ受診し、適切な治療を受けることがおすすめです。
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脱水症状になりやすい人の特徴とは
脱水症状はになりやすい人の特徴として以下などがあげられます。
上記の人はなぜ脱水症状になりやすいのかを解説しましょう。
高齢者
高齢者は、体内の水分保持能力が低下しているため、脱水になりやすいです。
また、加齢によりのどの渇きを感じる機能が低下しており、自覚しないうちに脱水状態になってしまうことがあります。
高齢者は特に注意して水分補給を行うことが重要です。
日頃から少量ずつこまめに水分を摂る習慣を身に着けておきましょう。
乳幼児
乳幼児も脱水症状になりやすい人と言えます。
体重に対する水分の割合が高いため、わずかな水分不足でも脱水症状が現れやすいです。
また、自分で水分を補給することが難しいため注意が必要です。
普段から、周囲の大人が注意深く見守ることで脱水症状を予防しましょう。
特に、下痢や嘔吐がある場合は、急速に脱水が進行するため早めの対処が必要です。
持病を持つ人
糖尿病や腎臓病などの持病があると、脱水症状が起きやすくなります。
糖尿病や腎臓病などの持病は病気の影響から体内の水分バランスが崩れやすくなります。
また、治療に使用する薬が利尿作用を持つ場合、水分が過剰に排出されることがあり、脱水症状を引き起こしやすいです。
脱水を感じやすい場合は医師への相談しながら薬の調整や適切な水分補給を行っていきましょう。
運動をする人
激しい運動をする人は大量に汗をかくため、脱水症状になりやすいです。
運動中に十分な水分を摂取しないと体内の水分と電解質のバランスが崩れやすくなります。
得に高温多湿な環境での運動や長時間トレーニングを行うと、体内の水分が急速に失われるため、こまめな水分補給がかかせません。
運動前後はもちろん、運動中に電解質を含んだ飲料を摂取して脱水症状を予防しましょう。
横浜内科・在宅クリニックでの対応
脱水症状の場合、無理に動かずに安静を保ち、ゆっくりと水分補給を行うことで症状が改善されることが多いです。
しかし、自信で水分補給が難しい場合などは点滴処置などが必要になることがあります。
当院では必要に応じて適切な点滴処置が可能です。
重度の脱水が認められる場合は、専門の医療機関への紹介も行っております。
脱水症状かも?という症状があったり、どこの病院へ行っていいかわからないといった場合などはお気軽にご相談いただけたらと思います。
まとめ
脱水症状は、軽度であれば適切な水分補給で対処できますが、重度になると命に関わることもあります。
日常生活の中で水分補給を心がけ、体調の変化に敏感になることが重要です。
また、脱水症状のリスクが高い人々は特に注意を払い、適切な予防策を講じることが大切です。
参考文献
脱水症のサインを見逃さないで|素早く見つけて、すぐ対策!脱水症&熱中症

横浜内科・在宅クリニック 理事長:朝岡 龍博 医師
『クリニックに関わる全ての人を幸せに』
『最後まで患者様と病気と向き合います』
【経歴】
・2016年 名古屋市立大学卒業、豊橋市民病院 初期研修医勤務
・2018年 豊橋市民病院 耳鼻咽喉科
・2020年 名古屋市立大学病院 耳鼻咽喉科
・2021年 一宮市立市民病院 耳鼻咽喉科
・2022年 西春内科・在宅クリニック 副院長
・2023年 横浜内科・在宅クリニック 院長
・2025年 医療法人 幸龍家 理事長
【資格】
・舌下免疫療法講習会修了
・厚生労働省 指定オンライン診療研修修了
・緩和ケア研修会修了
・難病指定医
・麻薬施用者




