腹痛で病院を受診する目安は?ご家庭で休日や夜間に強い腹痛を感じた場合の対処方法、受診目安について、医師が解説します。

夜間や休日に、突然腹痛に見舞われたことはありませんか?

腹痛を訴えるのが子どもやお年寄りの場合、重症度がわからず、とても心配になると思います。

本日は腹痛の原因として考えられる疾患や、救急外来を受診する目安、家庭でできる対処法などについてお伝えします。

腹痛とは?

「おなかが痛い」という状態は、誰でも一度は経験したことがあると思います。腹痛は、その発生機序から内臓痛体性痛関連痛の3種類に分けられます。

内臓痛

波のある鈍痛で、場所がはっきりしないことを特徴とします。

主に腸管や血管など、内部が空洞の臓器で生じ、これらの臓器に血液が行き渡らなかったり、炎症が生じたりすることによって生じます。

原因疾患として、腸炎尿管結石などが挙げられます。

体性痛

突き刺すような鋭い痛みで、場所がはっきりしていることを特徴とします。

炎症などにより、痛みを感じる神経が刺激されることで生じます。持続的で、体動によって増強することが多いです。

原因疾患として、虫垂炎など種々の原因による腹膜炎などが挙げられます。

関連痛

原因となっている臓器から離れた身体の表面の一部分に痛みを感じることを特徴とします。

腹部外に感じられるものを放散痛といいます。

原因疾患は多岐に渡りますが、心筋梗塞などでも生じます。

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腹痛の種類

腹痛の原因は、部位別に下記のような疾患があります。

胃や腸、胆のうなどの消化器領域だけではなく、泌尿器領域、婦人科領域、心臓・血管領域、呼吸器領域、その他筋肉・腹膜など多岐に渡ります。

体幹部(胴体部)のあるあらゆる臓器の変化により生じる可能性があります。

腹痛の部分別に、どのような病気の可能性があるのか、見ていきましょう。

みぞおちの真ん中

原因臓器: 食道・胃・十二指腸、胆嚢・膵臓、大腸(上部)、大動脈、心臓など

原因疾患: 逆流性食道炎、胃・十二指腸潰瘍、急性胃炎、総胆管結石、胆嚢炎、虫垂炎の初期、機能性ディスペプシアなど

■みぞおちの右寄り

原因臓器: 肺、肝臓、胆嚢、十二指腸、腎臓など

原因疾患: 胸膜炎、肝周囲炎、胆嚢炎、十二指腸潰瘍、尿管結石など

■みぞおちの左寄り

原因臓器: 肺、胃、膵臓、腎臓、脾臓など

原因疾患: 胸膜炎、胃炎、胃潰瘍、急性膵炎、尿管結石など

■右下腹部痛

原因臓器: 下部腸管(小腸大腸)、尿管、膀胱、子宮、卵巣など

原因疾患: 急性腸炎、大腸憩室炎、虫垂炎、便秘、過敏性腸症候群など

■左下腹部痛

原因臓器: 下部腸管(小腸大腸)、尿管、膀胱、子宮、卵巣など

原因疾患: 急性腸炎、大腸憩室炎、虚血性腸炎、便秘、過敏性腸症候群など

■へその周囲

原因臓器: 胃、十二指腸、下部腸管(小腸大腸)、胆管、膵臓、子宮、卵巣、大動脈など

原因疾患: 胃・十二指腸潰瘍、胃炎、虫垂炎(初期)、急性腸炎(小腸型)、腸閉塞、急性・慢性膵炎など

下腹部痛

原因臓器: 下部腸管(小腸大腸)、子宮、卵巣、尿管、膀胱など

原因疾患: 虫垂炎、急性腸炎(大腸型)、大腸憩室炎、便秘、過敏性腸症候群、腸閉塞など

救急受診を考えるべき腹痛

下記のような症状の場合には、血液検査やCT検査が望ましいと考えられますので、救急外来の受診救急車の要請を推奨します。

吐血、下血、著しい発熱、冷や汗、意識低下、血圧低下などを伴う腹痛

活動性の消化管出血(胃出血、食道静脈瘤破裂など)や、重度の感染症(腹腔内感染症を端緒とした敗血症など)を示唆する所見です。

緊急手術を含む迅速な処置が必要となるケースが多くあります。

腹部がパンパンに硬くなった腹痛

虫垂炎腸管穿孔(穴が開くこと)に起因する腹膜炎が疑われます。

胸痛や背部痛をともなう腹痛

尿管結石、急性膵炎、大動脈解離のように背部痛を特徴とする疾患は多くありますが、胃炎だと思っていたら心筋梗塞だったというケースも多くあります。

他にも、下記はご本人の感覚とはいえ、大変重要な指標です。

  • これまでに経験したことのないほどの激しい腹痛
  • 激痛で耐えられないほどの腹痛
  • 急に発症した腹痛
  • 安静にしていても6時間以上続く強い腹痛

腹痛は痛みの性状の違い、痛みの生じ方(どうすると痛くなり、和らぐか、例えば歩くと響く、押すと痛むが離すともっと痛む、など)、痛みの場所や移動の有無、痛みの持続時間などの特徴などから総合的に診断します。

腹痛の場合は特に、最初はなかった症状が、後から顕在化してくることも多くあり、初期の段階で判断がつかないことも珍しくありません。

救急車を呼ぶかどうかの最終的な判断は、医療者であったとしても、患者様の状態を直接確認しなければ正確に行うことができません。

患者様本人、および、ご家族様などそばにいる人が「いつになく酷い」「つらそうだ」と思ったときは、遠慮無く救急車を呼びましょう。

関連記事:腹痛の原因は?疑うべき病気と和らげる方法

腹痛の対処法や治療について

繰り返す症状で、普段からかかりつけ医などで対処法(頓服薬)が処方されている場合、まずはそれを試してみてください。

他にも、常備薬として使用している胃薬、整腸剤(市販薬を含む)があれば、使用しても差し支えありません。

しかし、いつもと違う症状、特に、これまでにない強さの症状である場合、自己判断は危険です。

次の項にあげる方法で対処しつつ、改善が乏しい場合には、かかりつけ医や救急病院へご相談ください。

家庭でできる対処方法

安楽な体位と心身の安静

特に内臓痛の場合、体位を変えることにより腹痛が緩和する場合があります。

前屈したり膝を曲げたりすることで腹部の緊張がほぐれ、症状が軽快することもあります。

安静と同時に、静かな環境や、適度な照度の部屋など、心理的にも安静を保てるとさらに良いでしょう。

温罨法(おんあんぽう)

腹部を温めることを言います。

消化管の緊張を和らげ、消化管の運動を促進し、腹部の緊張を緩めることにより、腹痛が緩和することがあります。

ただし、発熱を伴う炎症性の疾患(虫垂炎、胆嚢炎など)では逆効果であり、また、冷罨法(冷やすこと)は腹痛には効果がありません。

食事の管理

症状が下痢のみで腹痛がごく軽度の場合には、市販の経口補水液などによる水分摂取を行うことをおすすめします。

嘔吐の場合にも推奨されることがありますが、あくまで原因によります。

また、腹痛が激しい時は原則として食事は控えてください。

症状が軽度の場合でも、刺激の多いもの、脂肪分の多いものの摂取は避けてください。

関連記事:盲腸の痛みはどんな感じ?手術や入院期間について解説

まとめ

腹痛の原因は非常に多岐に渡ります。

痛みの場所などの情報から原因のおおまかな見当がつくこともありますが、最初はなかった症状が後から顕在化してくることも多くあります。

医療機関であっても、初期の段階で正確な診断がつかないことはけっして珍しくありません。

対応に迷われた場合には、ぜひ、横浜内科・在宅クリニック、かかりつけ医、救急病院へご相談ください。